【POINT.2】フレイルチェックコーナーを設置し、患者参加型の支援・指導をめざす

岡本 怜也 氏クオール株式会社 クオール薬局あさひ店(京都府)

地域医療に関わる薬局として、健康寿命に視点を置いた活動を展開

糖尿病患者は健常人に比べて、筋肉量が低下しインスリン抵抗性も高まりやすい傾向があります。糖尿病は骨粗鬆症や認知症リスクの増加、サルコペニアやフレイルのリスクが通常より高いとされ、健康寿命にも大きな影響を及ぼします。

最近では、新型コロナウイルス感染症の拡大により、不要不急の外出自粛などの影響から、多くの人は活動量が減る傾向にあります。このことは多くのメディアで、「コロナフレイル」として取り上げられ、注意喚起する記事を多く目にします。サルコペニアは、高齢で筋力量が減り、歩行速度が低下するなど運動機能が低下した状態ですが、一般的に体重が少ない、あるいは痩せている高齢者では、平均寿命が短いといわれています。

特に糖尿病患者というのは、インスリンの作用不足により、筋肉量や筋力が減少しやすい為、通常よりサルコペニアやフレイルのリスクが高い状態にあるといえます。また、多様な糖尿病治療薬があるなかで、その作用機序によっては、体重減少につながるため高齢者には使いにくい薬剤というのもあります。その方の体格、体重や筋肉量などに配慮した薬剤選択が大事だと考えています。

そもそも高齢者の低体重自体が死亡率の増加や健康寿命に関わるといわれています。そこで地域医療に関わる薬局として、現在、新型コロナウイルス感染拡大のなかで増加傾向にあるフレイルに着目した活動を行っています。

タンパク質やビタミンDの摂取など、筋肉量や骨量の維持焦点に指導

具体的には、薬局内に簡易的な「フレイルチェックコーナー」を設けています。特に患者さんのなかで虚弱というか、痩せているタイプの方には、「興味があったらどうぞ」とお声がけして、握力計の利用などをお勧めしています。

フレイルチェックコーナー

フレイルチェックコーナーで握力を測定

フレイルの評価方法については、まだ統一された基準はありませんが、国立長寿医療研究センターによる「日本版CHS基準」(J-CHS基準)※1では、①体重減少、②疲れやすさ、③活動性低下、④筋力低下、⑤歩行速度という5つの兆候のうち、3つ以上に該当する場合をフレイルと分類しています。

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フレイルチェック項目

薬局によっては、同基準に基づく20数項目のチェックリストにYes、Noを記入してもらって評価しています。単に質問に回答するだけでは、患者さん自身、面白くないと思うので、当薬局では「フレイルチェックコーナー」に、簡単なフレイルチェックの一覧表などの資料のほかに握力計を置き、測定してもらうことで、ご自身で興味を持ってもらえるようにと工夫しています。

実際に、「なんで握力計を置いているの?」と聞いてくる患者さんも少なくありません。そういう時に、パンフレットなどを用いて、必要性を説明すると興味を持ってくださいます。筋力低下の有無を確認していただき、必要に応じて体重減少や疲労感、歩行速度などもチェックして、今後の食事や運動療法の見直しに役立てていただこうと考えています。

私は京都府の糖尿病療養指導士の資格を取得していますので、食事と運動については専門的に指導することができます。特に食事については、基本的にタンパク質やビタミンDの摂取を促すなど、筋肉量や骨量を維持するためのポイントについて紹介するようにしています。

今後は、地域住民に向けた健康フェアなども開催したいと思います。いまは新型コロナウィルス感染拡大防止が優先であるため大掛かりなことはできませんが、糖尿病の一次予防という視点も含め、フレイルなど不利益となるリスクを早期に発見し、地域住民の健康づくりに介入ができたらいいなと思っています。そして健康寿命の延伸に貢献したいと思います。

  1. 国立長寿医療研究センター「日本版CHS基準」

    https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/frailty/