【POINT.1】“糖尿病専門医”から診療所へ治療方針を共有する連携パスの運用がスタート

山本 隼也 氏/北尾 美帆 氏総合メディカル株式会社 そうごう薬局 大刀洗店/北野調剤薬局(福岡県)

登録患者数多いクリニック中心に、薬剤師介入への高い期待

嶋田病院に2006年、赤司朋之先生が赴任され、地域医療支援病院の活動の一環として連携パスの運用が開始されました。同院では同時に連携専従のコーディネートナースという看護師を2人配置し、連携パスに参加する診療所1軒1軒を訪問して、外来患者さんと病院・診療所医師をはじめ多職種との「架け橋」を担っています。連携ツールとして診療情報提供書や連携パスシートのほか、継続的な糖尿病療養指導を行うためのコーディネートナース作成の各種療養指導リーフレット、さらに患者さんが持参する日本糖尿病協会発行の「糖尿病連携手帳」が活用されています。

そうごう薬局 大刀洗店隣接の「医療法人 やなぎ医院」(以下、やなぎ医院)は内科、循環器科を中心に在宅診療にも取り組む、連携パス参加クリニックの一つで、嶋田病院からコーディネートナースが訪問し、患者情報の共有をします。時節等に合わせ患者指導に役立つ療養指導用リーフレットを持参し、指導のポイントを伝えます。

コーディネートナースがやなぎ医院を訪問する際には、そうごう薬局 大刀洗店の薬剤師も同席します。そのミーティングは「申し送り」と呼ばれますが、薬剤師側からも困っている点や疑問点などを意見交換し、コーディネートナースを介して嶋田病院に持ち帰ってもらうという双方向での連携もあります。現在のところ、薬剤師が申し送りに参加しているのはやなぎ医院だけですが、連携パスの登録患者さんが多いクリニックでは、積極的に薬剤師介入が求められる傾向があります。

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循環型糖尿病連携パス

例えば薬が飲めていない患者さんに対して、週一回製剤への変更をこの申し送りで検討し、服薬アドヒアランスが改善した事例もあります。申し送りの際に、眼科の受診ができていない情報を得た場合に受診勧奨をしたり、生活背景や家族の支援態勢などの情報を聞いて、薬局でも総合的な患者フォローアップにつなげています。

糖尿病を焦点に地域薬剤師に広がる連携ネットワークの輪

2012年7月に糖尿病療養指導の知識やスキル、技術の向上を目的として、地域の久留米三井(みい)薬剤師会と嶋田病院、そうごう薬局とが合同で「小郡七夕薬薬ネットワーク連絡会」という主に薬剤師向けの勉強会を立ち上げ、隔月で開催しています。地域の薬局薬剤師が対象で、嶋田病院の医師、薬剤師、看護師、栄養士なども加わり、40~50人の参加があります。勉強会では、赤司先生による、薬物療法に限らず幅広く糖尿病の知識が得られる講義や、コーディネートナースによる療養指導リーフレットの解説が行われます。この会で療養指導リーフレットの解説を行うのは、参加者がその内容を理解し、どの施設でも同じように療養指導を行えるようにするためです。

療養指導リーフレットは、コーディネートナースが各施設を訪問するなかで見つけた課題や話題を拾い上げ、2か月ごとにテーマを決めて作成しています。実際に患者さんに話を聞くと、ラーメンの残り汁に白飯を入れるのが好きな方がいたり、近隣には果物で有名な「うきは地区」があり、特に夏場は果物やアイスもよく食されます。そこで、こうした現状に合わせて、塩分や糖分の過剰摂取を注意喚起するリーフレットが作成されています。また、糖尿病患者さんは、塩分摂取量に注意が必要な方も多いことから、明太子やラーメンなどの九州ならではの食品をもりこんだ塩分表なども作成されています。

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塩分表リーフレット(ラーメン編)

そうごう薬局 大刀洗店では糖尿病の患者さんだけでなく、必要に応じて患者さんにあった内容のリーフレットを指導に活用しています。

また、「血糖が上がるのでこれを食べたらいけない!」というネガティブな声掛けではなく、好きなものを食べるためにはどうしようかと、一緒に考えるようにしています。糖分の多い果物でも、「一日これくらいだったら食べられますよ」と説明するようにしています。