【POINT.2】病院・診療所・薬局が連携して、地域として糖尿病ケアの質担保

山本 隼也 氏/北尾 美帆 氏総合メディカル株式会社 そうごう薬局 大刀洗店/北野調剤薬局(福岡県)

糖尿病連携手帳の検査値を活用し、聞き取りと患者支援を充実

連携パスの患者さんと多職種間の連携ツールとして糖尿病連携手帳(日本糖尿病協会)※1を活用しています。通常、患者さんは、かかりつけ医に通い、年に1~2回、嶋田病院で診察を受け、その検査結果は手帳に記録されます。薬局では検査値を踏まえ、聞き取りや指導に活用しています。例えば、推定塩分摂取量を確認し減塩指導を行ったり、腎機能のデータから、減薬につなげた事例もあります。連携パス登録患者さんは検査や検査値に対する理解度が高く、眼科や歯科の受診率も高い傾向にあります。これは日頃、薬剤師を含め多職種連携で声掛けフォローしている効果だと思います。

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歯科・眼科受診啓発キャンペーン リーフレット

手帳には、表紙に自己管理応援シール(日本糖尿病協会)を貼り、薬物療法の状況が一目でわかるように「見える化」しています。病院で“HbA1c値の目標シール”が貼られ、薬局では薬剤の低血糖のリスクに応じておくすり治療状況のシールを貼ります。シールを貼ることで患者さんが日々の療養で低血糖を注意する意識づけになっています。手帳の中には眼科や歯科の受診状況やその他の検査値も記載されているので状況に応じて受診勧奨や減塩指導を行います。このように、手帳は患者さんやご家族など介護者を含め、情報共有の一環として役立っていると思います。

実効性のある連携には自らの専門性認識と他職種の専門性把握が大切

多職種連携に関しては、例えば地域ケア会議で他職種とディスカッションする機会があります。以前、複数科に通う患者さんがきちんと薬が飲めていないという相談があり、複数科の薬剤を一緒に一包化して支援できることを伝えました。患者さんも含めて多職種で連携を行っていくには、連携の中での様々なニーズを確認し、他職種の専門性を把握した上で、各職種が自分たちの専門性を発揮してできることは何かを考える。そういう視点が大事だと思います。

また、この地域の薬剤師にとっては、例えば尿中アルブミンは耳慣れた言葉です。しかし、異動してきた薬剤師にとっては耳慣れないというケースは少なくありません。検査データとそれが何に関係しているのかなど、日頃の研修と連携関係により、皆さんの意識はすごく高くなっていると感じます。

さらに、赤司先生は「日本一の糖尿病診療モデル地区」を目指し、様々な情報発信をされています。そのことも多職種の共通認識を醸成し、一定レベルの質を担保できることにもつながっていると思います。

新型コロナ禍のなかでも、WEB活用し広がる多職種研修の機会

砂糖含有量の展示

最近は、地域住民の方々にも広く健康支援のアプローチをしています。2017年頃から久留米三井薬剤師会主催の健康フェアという形で、こども薬局ではお菓子を使っての調製や、ジュースとかき氷シロップを使って水剤調製等の体験を行い、展示スペースでは空のペットボトルに、ジュースに含まれる量の砂糖を入れたり、料理の写真の裏にその料理に含まれる塩分量を記載するなど、糖分や塩分を“見える化”展示し、親子で考えるスペースを作ることで、糖尿病予防等の啓発や食育に関わる取り組みを進めています。

一方、「小郡七夕薬薬ネットワーク連絡会」は、新型コロナ禍により2020年2月の第46回を開催して以降、開けませんでした。そこで赤司先生と相談し、嶋田病院が以前から、地域の医療スタッフ全般を対象に開催している「糖尿病の基本を学ぶ会」と合同で、第47、48回の連絡会をWEB開催しました。赤司先生の講演など事前録画をアーカイブ配信する形ですが、他地区の方も含め約100人の参加者がありました。これまで現地参加が難しかった方々にとっては、貴重な学ぶ機会が提供できたのではないかと思います。

現在、両店舗に3人の糖尿病療養士の資格取得者がいますが、今後は、小郡七夕薬薬ネットワーク連絡会として、人材を輩出するなど、質の担保・向上を行い、更に糖尿病連携手帳の普及、新たな活用法を探っていきます。

  1. 糖尿病連携手帳(日本糖尿病協会)

    https://www.nittokyo.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=29