【POINT.1】「3か月以内の退院」に向けて、薬剤師もチームの一員として薬物療法に介入

和田 智仁 氏社会医療法人居仁会 総合心療センターひなが/診療技術部薬剤課リーダー

病院薬剤師による訪問指導とともに、薬局側にはレポート求め互いに情報共有

総合心療センターひなが(以下、当院)は精神科単科病院で、10病棟(480床)のうちスーパー救急病棟(精神科救急入院料病棟、2003年に許可)が3病棟(133床)あり、各病棟に担当薬剤師が配置されています。昨年度実績での年間の救急病棟への入院患者数は710人、1日平均在院患者数は約430人、平均在院日数は200.6日でした。また、救急病棟に限定した平均在院日数は、57.9日でした。また、県北部エリアには他にも精神科病院はありますが、精神科救急医療当番日の約3分の1を当院で担当しています。

救急病棟では3か月以内の入院が基本となるため、入院当初から、期限内の退院を目指し、薬剤師も介入していくことになります。

当院では地域連携室のPSWが窓口になって入院の受け入れ及びベッド調整をしています。当院の外来患者だけではなく地域の精神科クリニックからのご紹介や、総合病院からの入院依頼もあります。総合病院からの入院依頼としては、自殺企図などで救急搬送され身体的な治療終了後、精神的なフォローアップが必要と判断され当院へ入院となるケースがあります。入院相談の時点から地域連携室からの院内メールで患者情報や処方薬について情報共有をおこなっています。入院までのスケジュール調整についても把握できるため、持参薬など入院の受け入れに向けた準備にも役立っています。

入院時には診察の場面に薬剤師も同席し、本人やご家族からアレルギー歴や副作用歴に加え、入院前の服薬状況についても確認し、場合によっては、薬局側に問い合わせをさせていただくこともあります。また、保険薬局から “訪問指導”に行っている患者さんも多くいますので、入院するタイミングで薬局側が薬を預かっている場合には、薬を持って来てもらうこともあります。

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多職種連携による退院時支援とフォローアップ

長期入院患者に対しては退院後の一定期間、病院薬剤師・看護師・精神保健福祉士がともに居宅訪問

退院後のフォローアップは、ほとんど保険薬局の先生方にお願いしています。ただ、長期の入院患者さんが退院した場合には、退院後3か月間は病棟看護師とPSWが訪問看護に行くケースが多いので、必要に応じて我々も一定期間、一緒に居宅訪問したり、保険薬局から患者レポートをいただき、情報共有をしています。

現在も、退院後2か月目の患者さんを毎週金曜日に訪問しており、残薬や精神症状などについて訪問看護ステーションや保険薬局と連携し、情報共有しています。

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多職種連携での退院後フォローアップ

訪問看護には診療報酬上の点数が付きますが、現状では薬剤師が訪問することによる加算などはありません。忙しい日常業務の中ではありますが、病棟スタッフから一緒に行ってほしいという要望でもあり、入院中ずっとみてきた患者さんですので、我々が訪問すると安心されます。長期入院されていただけに、地域生活に慣れるまでは病院薬剤師も一緒にフォローし、その後は薬局にお任せするという流れです。

病院側では“再入院回避の一包化”でも、薬局側では“点数の壁”と認識に差

入院処方は月に約2,600枚ですが全て一包化し、氏名、用法、日付を印字しています。また処方箋には検査データが印字され、処方監査や調剤監査の際に活用しています。外来処方は月に約3,700枚で99%が院外処方です。そのうち8~9割を門前の2薬局にカバーしてもらっています。

精神科医療の場合、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度「自立支援医療制度」があり、利用する精神科医療機関だけではなく保険薬局についても指定する必要があります。外来患者の8~9割を門前薬局の先生方にお願いしているので、直接トレーシングレポートを持ってきてくれたり、その際に気になる患者さんの問題点などの情報交換をしたりと、十分に連携させていただいています。

一方、地域薬局については、入院してきた時の患者さんの状況をみて、我々の立場から見て、問題だなと思う事例があります。

例えば、当院では入院処方は全て一包化していると述べましたが、精神科の患者さんは、薬の飲み忘れが再入院に直結することが多いため、院外処方についても、同じく完全一包化をお願いしています。しかし、1~2剤だとヒートのまま出し、それが飲めずに再入院するというケースもあります。薬局に聞くと、「少ない数で一包化しても点数が取れないので・・」と言われてしまうこともあります。我々としては、患者さんが再入院しないようにすることが最大の目的ですが、認識の違いを感じます。