【POINT.2】安定し、落ち着いた状態の維持・継続のための患者支援は地域薬局の“使命”

和田 智仁 氏社会医療法人居仁会 総合心療センターひなが/診療技術部薬剤課リーダー

退院時共同指導には実際に関わった多職種が参加し、担当薬局と情報共有

保険薬局との退院時共同指導については、長期入院の治療抵抗性統合失調症患者、独居の患者さんなど退院後の服薬確認や薬学的管理が継続して必要な患者さんを中心に実施しています。参画する薬局薬剤師は、ほとんどが門前の2薬局ですので、お互いに時間調整もしやすいという利点があります。退院してから訪問指導をお願いすることもあるので、可能な限り薬局側の日程に合わせるように調整しています。また、病棟看護師やPSWの方に参加してもらい、実際に関わっている多職種から、患者さんの情報を伝えるようにしています。

長期入院の事例では退院後、担当薬局に3か月間の患者レポートを依頼しています。そのため退院後の状況はある程度、把握できています。退院する患者さんはある程度落ち着いた状態ですが、それを維持・継続してもらい、再入院にならないことが一番大事かなと思います。我々と連携しつつ、その安定した、落ち着いた状態を継続してもらうよう、支援していただくことが薬局の役割かなと思っています。

ps_vol6_05
拡大

退院時共同指導サマリー

ps_vol6_06
拡大

施設間薬剤情報連絡票

また、法人内には訪問看護ステーションがあり、訪問看護を利用される患者さんも沢山います。そのなかで、「この患者さん薬が飲めてません」「余っています」といった情報をいただくことがあります。その時には担当薬局に情報提供し、服薬指導を依頼したり、訪問指導に行っている場合には、改めて在宅での状況確認を依頼することもあります。

ある長期入院されていた患者さんの事例ですが、退院後、グループホームに入居しました。しかし、人間関係の構築が難しく、当初は薬もきちんと飲めていませんでした。予定では薬局からの訪問は2週間に1回でしたが、状況を踏まえ毎週の訪問を依頼し、その後は服薬状況が安定しています。

「児童・思春期」に対する“受け皿”が少ない中、チームの一員として積極的な対応を目指す

当院は救急病棟を3病棟有しており、それぞれの病棟で入院患者に特徴があります。私が担当するのは児童・思春期の患者さんが多く入院される病棟ですが、どうしても親御さんとの関係性があるので、難しい面があります。入院する5割がASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)、ADHD(注意欠如・多動症)で、2割が虐待などによるトラウマ関連などになっています。月に2回、児童精神科の医師や公認心理士などによる勉強会や児童カンファレンスの開催などがあり、多職種による情報共有や情報提供の場になっています。薬剤師からも、薬剤管理指導時の様子や副作用に関する情報を提供しています。

児童・思春期の患者さんについては、どの病院でも受け皿が少ないのですが、当院には児童精神科の先生方がおり、積極的に受け入れていこうという方針です。その先生を中心にチームで対応していますが、本人だけでなく親御さんの薬に対する誤った認識から治療が上手くいかないこともあるので、薬剤師としてしっかり関わっていけたら良いなと思っています。

医師との信頼・協力関係のなかで、患者にとって“より良い薬物療法”を探求

このほか医師や他の職種とのタスクシフトについてもお互いの負担軽減のために現状での対応に加え、しっかりと考えていかなければならないと思っています。

当院では、医師や事務職員の負担軽減ために、門前薬局とは、後発品への変更や残薬調整といった対応についてプロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM)を実施しています。変更後に、トレーシングレポートによる報告を受け、電子カルテ上で共有することで、情報の一元化にもつながっています。

医師とのタスクシフトについては、外来患者に新規で持効性注射剤(LAI)を導入する際に、オンコールで処方医から、「隣の診察室を開けたので、説明しておいて」といった連絡をもらい対応することもあります。また、睡眠薬を過剰に処方されて入院となった紹介患者さんに関する処方設計についても意見を求められ、減薬スケジュールについてガイドラインなどを参考に提案したという事例もあります。このように薬物療法に関して、薬剤師に任せてくれる先生方が多くいらっしゃるという現状は心強く、ありがたいと思っています。