【POINT.1】クリニックとの連携にはトレーシングレポートも活用し、患者の“言えない”を伝える

野口 勇樹 氏サワカミ薬局おいらせ青葉店/管理薬剤師

気になる患者さんは “受診日の前”にフォローアップし、治療の質向上を目指す

おいらせ青葉店があるおいらせ町は、主要産業は農業ですが、三沢市や八戸市に勤務する方々の新興住宅地です。私の周りをみても子育て世代が増えています。この店舗の処方箋は隣接の「みさわの森クリニック」が約98%を占めます。対応する薬剤師は、日中3人体制ですが、開業時間は朝9時から夜8時半か9時頃までなのでシフト制を敷いています。

店舗開設は、同クリニックと同時期ですが、私自身は開業後の異動で配属されました。現在約4年目になりますが、患者さんは徐々に増えています。一般的に精神科クリニックは、認知症だとか領域別のことが多いのですが、同クリニックでは認知症、不眠症、発達障害から統合失調症まで幅広く診ているので、年齢層を含め多様です。発達障害では小学生、中学生、高校生のほか大人の発達障害の患者さんも多く来ています。最近は適応障害の患者さんが多い印象ですが、その根底には発達障害があることが多いようです。

私は未だ精神科疾患に関する資格は取っていませんが、書籍や各種講演会の聴講のほか、月1回程度、八戸市の精神科医師会のWeb研修会に参加しています。将来的には資格を取りたいと思っています。

症状の一つ「喉のつかえ」の訴えには、個々の状況に合わせた剤型変更を提案

同クリニックの先生は、聞けば教えてくれる方なので連携は取りやすいと思っています。例えば、患者さんが受診した時に、先生に言うべき副作用のことを言い忘れたり、言いそびれてしまったことなど、服薬指導時に丁寧にヒアリングします。

同クリニックは完全予約制ですが、先生の前では緊張して言えなかったことが、薬局に来るとポロポロと出てきます。その中で、これはほっとけないなという副作用などがあれば、その場で先生に問い合わせをかけることもあります。

また若い患者さんに多いのですが、「喉につかえたものが、ずっと取れない」と訴えることがあります。精神科疾患の症状の一つといえますが、大きめの錠剤が飲めないという嚥下に困っている患者さんは少なくありません。

剤形によって飲める飲めないが決まることもありますので、先生には剤型変更を提案します。ほとんどの場合は受け入れていただき、小さい錠剤に変えて複数錠とする場合や、粉薬に変更します。逆に、粉だと飲みにくい、味が嫌だという患者さんもいますので、その時は錠剤への変更を提案しています。その意味で、精神科領域では、口腔内崩壊錠はとても大事です。

フォローアップでは精神面ばかりでなく、体調面もきちんと確認することが大事

医師との連携ツールとしてトレーシングレポート(TR)も活用しています。気になる患者さんについて、「次に来る直前に電話してもいいですか?」と、了解が得られた方のフォローアップをしています。なかでも希死念慮のある方には、特に気にかけて連絡するようにしています。

電話でのフォローアップのタイミングは、受診日の少し前で、副作用や身体的状態について確認しています。例えば、眠気、吐き気などの副作用が少し続いているような方は、本人はそれが当たり前だと思って、先生に伝えないこともあります。また診察当日も、日中の精神的な安定性や不安などは訴えても、夜寝れない、途中で起きてしまうといったことを伝えずに診療を終えることは少なくありません。従って、事前に精神面だけでなく、体調についてもきちんと聞きとって全体としての状況を把握しておくことが大事です。

フォローアップした内容は、すべて記録には残しますが、そのうち治療に役立ちそうな内容についてTRを送るようにしています。

そこで大事なのは、TRの数が多いと結局、読んでもらえないということです。量より質を重視し、特に副作用に関連する事項や治療に必要であろう情報に絞っています。日記のようにTRを出してしまうと、大事な副作用が埋もれてしまいかねません。そのため大体週に1、2枚ですが、その頻度であれば、逆に「何だろう?」と気にしてもらえます。