【第2回】地域医療連携の実際(外来) お薬手帳をベースにトレーシングレポートの活用

荒木 隆一氏市立敦賀病院 医療支援部部長 理事


薬機法や薬剤師法の改正もあり、薬剤師の役割が大きく変化せざるを得ないと感じています。2020年の診療報酬改定では、外来の抗がん剤治療に対し、レジメン内容の共有をベースに、保険医療機関と保険薬局が一体となり、副作用のモニタリングなど薬学管理体制の評価が始まりました。その他にも、ポリファーマシー対策や吸入指導、糖尿病治療などの領域でも、病歴薬歴などを共有しながら、個々の患者さんの治療に対応する業務が評価されています。

以前から、情報共有のために、お薬手帳が活用されてきましたが、スペース等の問題もあり、情報共有の限界も指摘されております。また、お薬手帳を複数冊持っている患者さんも見かけます。電子お薬手帳のアプリケーションも次々開発されていますが、残念ながら十分普及していないようです。しかし、患者情報の一元化にはやはりお薬手帳が有効です。全国では地域毎に色々な取り組みがされており、多職種や患者さんを含めた取り組みが大切だと言われています。

具体例については、『地域医療連携実例集vol.2』(日本薬剤師会編集)で取り上げた、「會津お薬手帳で患者・病診・薬局が情報共有」一般財団法人竹田健康財団竹田綜合病院(福島県会津若松市)※1などを参照していただきたいと思います。

また、お薬手帳以外にも、地域医療連携のための情報提供ツールとして様々な物が活用されています(図)。

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出典:地域医療連携の手引き (Ver.1) - 日本病院薬剤師会

ここで注目されるのが、服薬情報提供書(トレーシングレポート)です。トレーシングレポートは、薬局薬剤師が、医師や薬剤師と、患者の薬物治療上の問題点について情報共有することができるツールであり、薬剤部門が院内でのトレーシングレポートの活用を率先することで、院内の医療従事者や地域の薬剤師会との連携が円滑になる事が報告されています。ただ、まだ活用の歴史が浅いために、現場では色々なトラブルが発生しているようです。

「何が言いたいかわからない」「ただの残薬調整に使用しないでほしい」など、病院薬剤師からは疑問の声も出ています。是非それぞれの地域で、運用のためのルールづくりや記載方法の研修会などを議論されてはいかがでしょうか?地域で価値ある文書に育てていただきたいと思います。

繰り返しになりますが、お薬手帳は、個人の医療情報を共有できる最も重要なツールです。このお薬手帳をベースに、双方向のトレーシングレポート情報を活用することで、病院薬剤師と薬局薬剤師が協力して行う安心安全な薬物療法の支援が現実的になっていきます。

それぞれの地域で利活用から仕組み作りを議論していただきたいと考えています。

  1. 地域医療連携実例集vol.2

    https://www.jshp.or.jp/cont/19/0610-1.pdf