【第3回】地域医療連携の実際(入退院) 入退院はリレーのバトンタッチをイメージして

荒木 隆一氏市立敦賀病院 医療支援部部長 理事


現在、急性期病院を中心に、医療の高度化への対応とともに効率性が求められており、在院日数が短縮しています。一方、対象となる患者さんは、高齢化や社会的課題を抱えており、退院時に支援が必要な場合が多くあります。その支援は、入院直後からの介入を必要とし、そして現在では、入院前の段階での関わりが大切となっています。そのため外来時点から、入院医療の提供を全体最適化する目的で、Patient Flow Management (PFM)の概念で組織的に管理する医療機関も増えてきました。

病院薬剤師として、入院前から患者の身体的・精神的・社会的背景を把握し、院内外の多職種と連携して持参薬の内容だけではなく、服薬状況の確認と、副作用やアレルギー情報などの薬歴把握は、医療安全の視点からも大変重要です。具体的な取り組みについては、実例集の「施設間情報連絡書がつなぐ連携」地方独立行政法人岐阜県総合医療センター(岐阜県岐阜市)※1や「患者情報連絡票で情報共有」 菊川市立総合病院(静岡県菊川市)※2を参考にしていただきたいと思います。

また、病床の機能分化が進んだことにより、複数の医療機関を経由して自宅へ戻る事例や、介護施設との連携も忘れてはなりません。そのため、薬物療法の情報を切れ目なく伝える仕組みが大切になります。入院患者の場合、処方薬の内容が変化しやすいので、退院時には入院中の薬物療法やその経過などについて、お薬手帳や施設間情報連絡書(薬剤管理サマリー)を用いて、次に患者を受け持つ医療・介護従事者への伝達を図るよう心がけましょう。

近年、独居や認知症患者の増加など、薬物療法を継続する上で暮らしの中に課題を抱える患者さんが急増しています。そのような中で、退院時カンファレンスは、患者の意思決定を確認し、退院や在宅生活開始に向けての方針などを検討・共有する場になります。多職種と連携し、共通のゴールを確認しながら、病院薬剤師が薬局薬剤師などへ、入院中の薬剤の変更理由や退院後も継続してモニタリングが必要な項目などを確認することが重要になります。

具体例については、「限られた資源を最大限活用~病院薬剤師が保険薬局の後方支援~」 特定医療法人 生仁会須田病院(岐阜県高山市)※1や「退院前ケアカンファレンス 」 尾道市立総合医療センター尾道市立市民病院(広島県尾道市)※2を参照してみてください。

最もリスクが高い入院時、退院時に、病院薬剤師と薬局薬剤師がお互いの役割を理解し、患者情報を共有して、リレーのバトンタッチをイメージして薬物療法をつないでいただきたいと思います。

  1. 地域医療連携実例集vol.1 https://www.jshp.or.jp/cont/18/0705-1.pdf
  2. 地域医療連携実例集vol.2 https://www.jshp.or.jp/cont/19/0610-1.pdf