遠藤 一司氏日本臨床腫瘍薬学会 / 顧問


がん薬物療法をはじめとする多くの薬物療法の質を高めるためには、薬局と処方箋を発行する医療機関との連携がとても重要となります。医療そのものが、専門職を含め多くの医療関係者により成り立っていることを考えると当然のことです。しかし連携すると言っても、どのような連携か、誰と連携するのか、どの程度連携するのかは、患者の状態や医療の内容によって異なります。がん薬物療法を例に医療連携について述べたいと思います。

2020年の診療報酬・調剤報酬改定で新設された連携充実加算と特定薬剤管理指導加算2は、どちらも連携することが基本となっています。この場合は、薬局薬剤師と病院薬剤師の連携、いわゆる薬薬連携が主体となっています。

がん薬物療法では治療レジメンがとても重要になります。現在は、がん治療を行なっている医療機関ではレジメンを公開していますので、あらかじめ情報収集できますし、連携充実加算を算定している医療機関による研修会などで情報交換することができます。最近のがん薬物療法は医師だけで行うことはなく、医療機関内で医師や薬剤師、看護師などががん薬物療法チームとして活動しているので、薬剤部門の薬剤師と連携することで、治療方針などの重要な情報も得ることができますし、医師との情報交換も進められます。

それらを参考に窓口での指導やテレフォンフォローアップ※1などで患者の状態を聴取し、緊急時には電話で、それ以外はトレーシングレポート※2により医療機関に情報提供することで治療の質の向上を図ることができます。(図)

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医療連携によるがん患者に対する薬局での薬学的管理等

病院薬剤師と薬局薬剤師の連携については、末尾に参考として記載した調査研究事業で作成した連携に関するD V Dを見ていただくことをお勧めします※3。日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)の会員は学会H Pより、それ以外の方は所属の都道府県薬剤師会もしくは都道府県病院薬剤師会や全国の薬科大学に配布していますのでお尋ねください。

連携には医療機関と薬局の連携のほかに、薬局間連携もとても重要になります。がん患者はがん以外に疾患を持っていて、自宅や勤務先近くの薬局で調剤や指導を受けながら、がん診療連携病院や大学病院などで治療を受けるケースが多くあります。治療の初期や治療内容が確定しない場合には、医療機関に近い薬局や専門医療機関連携薬局での調剤や指導が主体となりますが、2回目以降やがん治療が安定した場合には、自宅や勤務先の近くの薬局で調剤や指導を継続することが望ましいと考えます。

がんの生存率が長くなっている現状から薬局と薬局の連携はさらに重要になってきます。これらの連携はがん領域に限ったことではなく、今後は多くの疾患で病院と薬局、薬局と薬局が真に連携することで薬物療法の質の向上や真の医薬分業の成果につながるものと考えます。

  1. テレフォンフォローアップとは、あらかじめ患者と約束していた日時に、薬剤師から電話をし、服薬状況や副作用の発生状況などを聴取し、併せて必要な情報を提供するなど、調剤後の継続的な薬学管理を行うこと
  2. トレーシングレポートとは、服薬状況提供書とも呼ばれ、薬剤師が患者の状態などから得た情報を医師に伝える必要があるとして、処方医師へ伝える文書のこと
  3. 参考:厚生労働科学研究費補助金医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業;「薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究」、「かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究」