遠藤 一司氏日本臨床腫瘍薬学会 / 顧問


2021年8月よりがんの専門医療機関連携薬局制度がはじまりました。患者が自分に適した薬局を選択できるためのもので、2015年10月に策定された「患者のための薬局ビジョン」に示されている高度薬学管理機能をもつ薬局を都道府県知事が認定するものです。主な認定基準は、プライバシーなどを配慮した構造設備、医療機関の会議への参加や連携、時間外での相談の応需体制、地域の薬局への医薬品供給体制など様々な要件が定められています。がん領域の専門性の認定を受けた常勤薬剤師の配置も求められています。現在は日本臨床腫瘍薬学会(以下「JASPO」という。)と日本医療薬学会のそれぞれが認定する専門薬剤師の取得が条件となるため、多くの薬剤師が病院において研修を行っています。

がん患者はがん診療連携病院や専門医療機関連携薬局だけに訪れるわけではなく、専門医や専門薬剤師がいない病院や薬局にもがん患者は訪れます。そのため、薬剤師も高血圧や糖尿病などの生活習慣病などと同様にがんに関する基本的な知識を持っている必要があります。

がん治療において、医療者には患者への十分な情報提供が求められます。がん患者は医師から病状、治療内容、検査結果および治療のリスク・ベネフィットなどについて説明を受けていますので、薬剤師は、患者の治療内容などの理解度を確認してから薬物治療に関する説明や指導を行うと良いでしょう。多くの患者はがんに罹患したということで、不安な気持ちになっていることに留意することが必要です。患者と良好な信頼関係を得ることが重要です。そのことが正確な患者情報を得ることにつながります。

がん薬物療法に関しては、抗がん薬など一つ一つの薬剤ごとの説明ではなく、レジメン※1に基づいて説明する必要があります。現在は、がん診療を行なっている医療機関の多くが病院のホームページにレジメンに関する情報を掲載しているので参考にすることができます。抗がん薬による効果や副作用の内容、副作用の発生時期、副作用の対処方法(支持療法)などについて丁寧な説明が求められます。

病院においては、がん治療は、医師(内科医、外科医、放射線科医師など)、薬剤師、看護師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなどさまざまな専門職種が連携しチームで患者に最適な医療を提供しています。薬局においては、医療機関と連携することがとても大切です。その際の窓口として薬剤部門と連携を図り、その後、医師、看護師などとの連携の輪を広げていくと良いでしょう。

がん薬物療法は副作用を和らげる支持療法が進化したこともあり、通院しながら治療を続ける外来治療が多くなっていますので、薬局の薬剤師の役割がとても重要になっています。

がん薬物治療の基本的な知識を学ぶには、がん種別の診療ガイドラインが有用ですが、自らの知識や経験に合わせたセミナーの受講や病院研修も効果的です。JASPOでは、初学者向けや中級者向け、さらには認定者や認定を目指す薬剤師を対象としたセミナーを実施していますので、自分にあったセミナーを受講すると良いでしょう。

  1. レジメン(regimen)とは、薬物療法における抗がん薬、輸液、制吐薬などを組み合わせた時系列的な治療計画(書)