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【第2回】薬物療法への介入について
遠藤 一司氏日本臨床腫瘍薬学会 / 顧問
2020年9月より改正された医薬品医療機器等法(薬機法)が順次施行されています。今回の薬機法の改正では、「住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し」として、調剤後の継続的な患者への服薬指導の義務化や、医師等との連携、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の認定制度、オンライン服薬指導がスタートしました。このことは薬剤師による対人業務の充実が大きなポイントになっています。
対人業務については、2015年10月に策定された「患者のための薬局ビジョン」でも強く打ち出されています。医師、看護師などは、わざわざ対人業務と言わなくとも業務のほとんどが対人業務であるのと薬剤師は一線を画しているように思います。
第1回にも書きましたが、病院薬剤師も長年、業務のほとんどを調剤に割り振っていた時代が長く続いてきました。しかし、薬局は昔からO T C医薬品を販売する際は対人業務のはずで、あえて対物業務や対人業務などと区別していなかったように思います。調剤専門薬局が増えてきたころから病院と同様に対物業務が多くなったのではないでしょうか。その後、調剤報酬などで対人業務に誘導するような改定が繰り返されてきましたが、満足するような結果になっていないので、ここにきて、様々な改革が進められているのだと思います。
薬剤師が介入することで、薬物治療の質的向上が認められた例を紹介します。
抗がん薬の服用中に有害事象が発生し、治療が延期されたり中止されることも少なくありません。肝細胞癌に対する抗がん薬による治療において、薬剤師が患者に有害事象やその支持療法薬についての説明や外来診察前の状況確認(薬剤師外来)、週1回の電話連絡での患者状態の確認(テレフォンフォローアップ)などを積極的に行い、有害事象の早期発見と予防の徹底に努めたことで、発症例の多い副反応による治療の中止例がほとんどありませんでした。
また、2013年度から2020年度までの調査研究「薬剤師が担うチーム医療と地域医療の調査とアウトカムの評価研究」、「かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究」において、テレフォンフォローアップなどにより患者の薬物治療に介入することで、副作用の早期発見や迅速な副作用対応が認められました。それらの調査研究により、診療報酬の連携充実加算や調剤報酬の特定薬剤管理指導加算2の評価につながりました。
介入はより広くより深くすることが望ましいと思いますが、限られた時間や人材においては、どの患者、どの疾患のどの薬物に関して介入するのかを判断する力も求められます。