- トップ >
- 学び >
- 薬剤師へ エキスパートが届けるメッセージ >
- Vol.12 薬局管理栄養士の新たな可能性(全4回) >
- 【第4回】治療継続の支援に向けて
【第4回】治療継続の支援に向けて
末延 竜哉氏株式会社サンキュードラッグ コミュニティケア事業部在宅支援在宅マネージャー
疾患のコントロール・改善には薬物治療の継続が重要となります。しかし、忙しさや自身の体調への関心の薄さ等から治療を離脱してしまう例が見受けられます。平成14年度の糖尿病実態調査報告では医師により糖尿病と言われた人の治療状況について「現在治療を受けている」群は43.6%となっています※1。治療の継続が課題となるのは糖尿病に限ったことではありません。こうした実態を受け薬局窓口で地域の方々の治療を支援する取り組みを実施しました。
弊社の調査にて、処方箋の初回受付後〜半年間の受付状況から疾患別の服薬継続率(図1)を確認しました。対象疾患は糖尿病、高血圧、脂質異常症の3項目となっています。その結果どの疾患に於いても6回目には約6割が治療離脱しており、特に初回から2回目にかけて最も離脱の割合が大きいことが分かりました。

図1【疾患別】服薬継続率
そのため、初回の服薬指導を見直すことで全体的に服薬継続率が改善されると期待し、リーフを用いた服薬指導を実施する取り組みを開始しました。
2022年6月現在までに高血圧症、脂質異常症、糖尿病、呼吸器(喘息・COPD)、PPI初回処方時のリーフが用意されており治療継続率向上のために利用しています。現在(2022年6月)の取り組みでは、薬物治療を初めて開始する方を対象にリーフを使用し、リーフによるアプローチを実施した群と通常の服薬指導を実施した群に分け2回目の来局状況を確認しています。
2021年4月から2022年3月までの集計結果では、アプローチ群と非アプローチ群の2回目の治療継続率について高血圧症では20.3%、脂質異常症では9.1%、糖尿病では12.6%の差がでました(図2〜4)。

図4【糖尿病】2回目治療継続率
リーフを用いることで下記の効果が得られたと思われます。
- 薬剤師の経験年数による説明内容の差が最小限となる
- 言葉だけの説明だけでなく視覚から情報が入ることで理解が深まる
- 次回来局日を記載する欄の利用により治療スケジュールの共有ができる
実際に2回目の治療継続率が上がっており地域の皆様の薬物治療を支援できたように思います。また、薬剤師が改めて治療継続に向けて意識を高めたことで服薬後フォローを実施する例も増え信頼関係の構築に繋がっています。
服薬指導に使用するリーフは薬剤師社員が作成に携わっています。今回紹介したリーフのうち、糖尿病の項目については薬剤師と管理栄養士が共同して作成しました。弊社では2020年より薬剤師と管理栄養士の有志による自主勉強会を開催し、糖尿病、脂質異常症や高血圧症等について治療ガイドラインに沿って意見交換をしています。それぞれの専門性からガイドラインを見ることでお互いに意識していなかった医薬品と食事の側面を知ることができます。
薬物治療は治療を受ける患者自身が治療法を十分に理解し日常生活のなかで実践できるかどうかが重要です。治療を中断すると多くの場合、数年後に重症化して受診することとなります。そうなると初回の医療機関の受診や保険薬局の利用に伴う医療資源が無駄となる上、さらに多くの費用が必要となります。
治療に適切に介入し継続を支援することは、地域住民の健康寿命を延ばし、医療費の削減に繋がります。初回介入時の服薬指導のブラッシュアップと薬局窓口での相談・指導、ドラッグストア店頭での管理栄養士の食事・運動指導が相互に機能することで、治療継続率の向上に貢献していきたいと考えています。
- 平成14年度糖尿病実態調査報告
https://www.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-kou4/data14/to11.pdf