【第3回】地域の健康づくりの支援

末延 竜哉氏株式会社サンキュードラッグ コミュニティケア事業部在宅支援在宅マネージャー


生活習慣病は日本人の死因の半数以上を占めていると言われています。心疾患・脳血管疾患は動脈硬化が要因となるため、動脈硬化を進行させるリスクとなる糖尿病、高血圧症、脂質異常症等の疾患を未然に防ぐことや薬物治療によりコントロールすることは重要です。薬局の窓口で「特定健診で生活習慣の改善を指摘されました」「脂質異常症で病院受診をしていたけれど血糖値も高くなってきたみたいです」と相談を受けることもあります。薬剤師からも食事や運動のアドバイスを実施し経過を観察しますが、第1回コラムで触れた「スマイルクラブ」で管理栄養士が介入した例を紹介します。

糖尿病と高血圧症で薬物治療を継続している方(70代男性)が「ダイエットと糖尿病予防・改善目的」でスマイルクラブに入会しました。血糖コントロールの目標を確認し問題点の抽出をしたところ、炭水化物の過剰摂取と運動量不足が挙がったため、栄養支援と運動支援の介入が始まりました。内服薬については同店舗の薬剤師が確認を行い、薬効薬理、副作用情報を共有しています。低血糖リスクの考慮が必要な方であったため低血糖時の対応方法や治療薬の利尿効果を踏まえ、脱水予防について具体例を踏まえて説明を行いました。

その結果、食生活に対する知識が向上し、食事と運動について(図1)のように行動変容がありました。体重とHbA1cにも変化があり(図2)、Ⅰ度肥満が普通体重となりHbA1cはかかりつけ医からの目標である7.0未満となりました。

図2:体重とHbA1cの変化

薬剤師は薬の特性から摂取カロリーを減らす際に起こり得るリスクを説明・モニタリングすることで安全性に配慮しながら治療効果が最大限となるよう支援し、管理栄養士は生活状況を深く把握し改善することで治療効果を高め健康維持の支援ができました。

2021年度におけるスマイルクラブでのカウンセリング件数は8,341件となっています。年度末の会員数は361名であり、多くの地域住民の皆様にご利用いただいています。利用者の目的はダイエットや筋肉増強、食事メニューの相談等多種多様なですが、この中で生活習慣が改善したことで薬物治療中の内服薬が減薬に至った例が4件ありました。

実は暮らしの中で健康増進に取り組む機会やツールは数多く準備されています。ネットやテレビには情報が溢れていますし、民間企業の支援、スポーツジムや市町村の取り組み等を利用することもできます。私の居住している市では、地域サロンへ介護予防の専門職の方が訪問して支援する活動もあります。しかし、自身の健康について日々行動している方、興味はあるけれど方法が分からない方、無関心な方等、人の意識は十人十色です。行動までの一歩が踏み出せない理由には、忙しくて時間がとれないことや、わざわざ活動の場所に出向くのが面倒であること等が考えられます。スマイルクラブは調剤併設型のドラッグストアで実施しているため「お買い物のついで」「薬局で薬をもらうついで」に立ち寄ることが可能です。

生活の一部としてご利用いただいているドラッグストアという環境で「何かのついで」に健康維持の後押しができることで少しでも多くの方に自分自身の健康に興味を持ってもらえることを期待し、地域の健康づくりの支援に貢献できるよう努めています。