【第1回】薬剤師が在宅医療に関わる〜地域との連携の一歩〜

小林 輝信氏合同会社Sparkle Relation 代表、フォーライフ薬局 管理薬剤師


薬剤師が在宅医療に関わることをどのようにお思いでしょうか。

近頃は、「薬剤師も在宅をしないといけない」「今後重要な業務となる」などの意見を聞きますが、反対に「業務が忙しくなる」「緊急対応=夜間や祝日の対応はだれがするのだろう」「しないといけないのは分かるけど、日々の業務が忙しくて…」なども聞きます。

私が在宅医療を始めた時、「他の薬局がやり始めてからうちも…」「そんなことをしなくても患者は来るから」などの意見を聞きました。薬剤師が薬局から出ていくことさえも、ありえない環境の時代でした。

皆さんは自分の薬局・薬剤師は地域において認知されていると思っていませんか。私が在宅を始めた当時、地域の他職種の方々に会った際に実感したのは、自分が思っているよりも遥かに薬局の認知度は低いということです。薬局の説明をするのに、薬局名を出しても分かってもらえず、門前のクリニック名を出して、やっと少し思い出していただけるという具合でした。

そのときに感じたのは、自分の薬局は地域では全く認知されていない…。という事実。そこから、「××クリニックの隣の〇〇薬局」ではなく、「〇〇薬局の△△薬剤師さん」「△△薬剤師さんのいる〇〇薬局」というように、自分の名前で仕事ができなければいけないと、感じました。

地域に出て多職種の方と連携すると、薬剤師の知識=薬の情報を渇望しているのが分かります。医師や看護師などの直接的なケアを行う職種は重要になりますが、こと在宅医療においては内科的治療が中心であり、その要は薬剤と服薬になります。服薬に付随する情報、「なぜこの薬を飲まなければならないのか/どのような作用があるのか/副作用やそのときの発現初期の症状・気をつけること」などの視点での情報提供はとても価値があります。

よく、企業が在宅医療をスタートアップする際に、無菌調剤室の導入を検討したり、専門的知識を持つ薬剤師の雇用を行ったり、在宅経験者を雇用することがあります。しかし、私達が行う在宅は身近なところから始まると考えています。外来に来られる患者さんをよく見て、興味を持ち、少し感じた違和感に対してフォローするという繰り返しから始まります。

その患者さんの先を取り巻くように、様々な関係者・他職種がいます。患者さんのケアを充実させるために自ずと多職種連携は重要となるだけの話で、多職種連携ありきで患者さんを支えるわけではないのです。

薬剤師として気になる患者さんへの一言から在宅ケアが始まります。