【第4回】在宅医療の多様化〜緩和ケア・小児在宅〜

小林 輝信氏合同会社Sparkle Relation 代表、フォーライフ薬局 管理薬剤師


地域体制加算における施設基準では在宅薬剤管理の実績や夜間休日対応等の実績や麻薬の調剤実績(地域支援体制加算の分類により要件は異なり、他の要件もあります。要件を満たした施設に対して加算が算定できる)が求められています。

がん、心・肺疾患末期、認知症・老衰などを時間の経過と機能の低下で比較すると、疾病によって時間経過と機能変化に違いがあることが分かります(医療法人鉄蕉会 医療ポータルサイト参照※1)。

がんでは数週間、数日で極端に機能が低下。心・肺疾患末期ではイベントごとの増悪・回復を繰り返し徐々に機能が低下。認知症・老衰では機能が低い状態で徐々に機能が低下していきます。

また、淀川キリスト教病院「緩和ケアマニュアル」によると、緩和ケアを行っている患者では最後を迎える数週間〜数日で、全身倦怠感・食欲不振・痛み・便秘・不眠・呼吸困難・悪心・嘔吐・混乱・腹水など多様な症状が発現してきます。

このような様々な症状に対しては薬物治療が必要となり、在宅医療下では夜間休日を問わず、症状緩和のため、苦痛のない最期を迎えるために、私たち薬剤師が緊急対応を行う必要があります。

既往歴や症状・発症部位などにより、一概には言えませんが、疼痛増悪時における鎮痛薬の増量やローテーション、嘔気発現や増悪、不安や不眠などの精神的苦痛(死に対する)や便秘症状の増悪などに対する薬剤の処方がよく見受けられます。

下記の資料から様々な背景による痛みがありますが、身体的苦痛・精神的苦痛・社会的苦痛(から派生する心の痛み)などは薬剤により緩和される可能性が高いと推測されます。

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全人的苦痛(トータルペイン)をもたらす背景

緊急対応以外にも、下記のような機器を使用することも多く、携帯型ディスポーザブル注入ポンプは処方可能なため、使用方法などを理解しておいたほうがいいかもしれません。

在宅医療の中でも特に対応が遅れていると感じられる分野が小児在宅医療だと感じています。少し前のデータですが、下記にあるように実数を把握することが難しい現状があります。言い換えれば、認識されることがなく私達薬剤師が、気付いていない可能性があると考えることもできます。

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医療的ケア児の総数の推移と在宅人口呼吸器患者数の推移※2※3

力価計算や粉砕調剤(写真下)などの煩雑な調剤や、複雑な無菌調剤などは、調整だけでも1時間前後かかることがあります。

効率を重視することも経営的には重要だと思いますが、このような患者さんがいて、私達が動くことで、自宅での療養の一助となることを知っていただきたいと思います。

最後に、薬剤師法第一条に「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」と書かれています。

国民という文言が入っているのは医師・歯科医師・獣医師・薬剤師のみです。時代の変遷が早い現在、薬局・薬剤師はどのようなスタンスを取り、閉ざされた世界から外界と連携し、何を考え行動しなければならないかを考える時期に来たと感じています。

4回を通じて、何かのヒントになれば幸いです。

  1. 医療法人鉄蕉会 医療ポータルサイト(http://www.kameda.com/patient/topic/acp/05/index.html)
  2. 厚生労働化学研究所[医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・教育等の連携に関する報告書]

    https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E8%80%85.pdf

  3. 平成28・29年度日本医師会小児在宅ケア検討委員会報告書

    https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20180404_4.pdf