【第3回】在宅医療の多様化〜慢性疾患/認知症〜

小林 輝信氏合同会社Sparkle Relation 代表、フォーライフ薬局 管理薬剤師


前述で挙げたように薬剤師の関わる在宅医療には様々な種類がありました。

医療計画による、五つの疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)と、五つの事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む))に対しても在宅医療での関わりが増えてきています。

慢性疾患の患者であれば、服薬コンプライアンスを重視した服薬管理方法などが必要となります。

また、2025年には700万人とも言われている認知症の患者に対しては、特に個人ごとに生活環境の特性を踏まえた対応が必要となり、適切に服薬ができる環境整備を整える必要があります。

一例として、下記のようなことを考慮する必要があります。

服薬に関して
 ‐ 服用時点と生活リズムは合っているか
 ‐ 服用方法が本人に無理がないか
 ‐ 服用介助が必要か。(全介助/部分介助/介助不要)
主介護者(服薬介助者)
 ‐ いる/いない
 ‐ 家族等/介護職/看護職など
嚥下に関して
 ‐ 錠剤やカプセルの大きさに問題はないか
 ‐ 散剤を飲める嚥下力か
 ‐ ポジショニング
認知機能はどうか?
生活環境は?
利用している介護サービスは?

また、主介護者がヘルパーなどの介護職員の場合には、以下の10項目は「医療行為に該当しない」としており、下記の内容を把握した上で、薬剤師が関わっていかなければなりません。

  1. 水銀体温計・電子体温計による腋下の体温計測、耳式電子体温計による外耳道での体温測定
  2. 自動血圧測定器により血圧測定
  3. 新生児以外で入院治療の不要な者へのパルスオキシメータの装着
  4. 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について専門的な判断や技術を必要としない処置(汚物で汚れたガーゼの交換を含む)
  5. 軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)
  6. 湿布の貼付
  7. 点眼薬の点眼
  8. 一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)

  9. 坐薬挿入
  10. 鼻腔粘膜への薬剤噴霧の介助

※医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)より抜粋

最後に、
 ・食事
 ・排泄
 ・睡眠
 ・運動
等をふまえ、薬学的視点と合わせた総合的な指導が必要となります。

服薬カレンダーを使用する場合でも、カレンダー設置=服薬が可能になるとは言えず、下記のようなことを考慮の上で、カレンダーを選択し、設置する必要があります。

服薬カレンダーの例

 ・カレンダー自体の認識はあるか
 ・曜日の認識はあるか
 ・日付の認識はあるか
 ・数字の認識はあるか
 ・薬剤の認識はあるか
 ・服薬を忘れる傾向か
 ・飲みすぎてしまう傾向か
 ・本人のためのセット方法か
 ・服薬介助者用のセットか
 ・セットにより混乱は生じないか
 ・服薬確認の連携

これらのことを考慮した上で、薬剤師が実際にどのように介入できるか、事例を紹介します。

(事例)
不穏を訴える患者に抗精神病薬の追加投与は必要なのか⁉
 ―1日2回(朝食後/夕食後)に抗精神病薬を服用している
 ―不穏症状が日中にあり、昼食後の追加投薬を検討している

このままの内容の訴えであれば、昼食後に増量になるかもしれませんが、追加投与を検討する上では、日中の不穏とは何時位からなのか、毎日か/不定期か、不定期であればそのきっかけとなりそうな事象はあるのか、朝食前や夕食前(服用前)の精神的状態は…などの深堀りが必要となります。

患者への聞き取りから、起床から午前中は穏やかであり、昼食後より定期的に不穏になることが多いとの情報を得ることができました。医師との相談と、主介護者のマンパワーなどを総合的に検討した結果、Tmax:1.5時間、T1/2:4~5時間の薬剤を朝食後より10時に変更することで精神的にも落着きました。

このように、一見増量することは簡単ですが、詳細な情報を得ることにより、服薬タイミングを変えることで、対応できる例も多々あります。