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【第4回】腎機能低下患者への副作用モニタリングを考えてみよう
佐藤 ユリ氏氏NPO法人どんぐり未来塾 代表理事
腎機能が低下している患者さんでは、腎排泄型薬剤を服用すると排泄遅延が起こり、腎機能が正常な方よりも血中濃度が上昇するため「薬理作用からくる副作用」が発現しやすくなります。
このような場合、患者さんの腎機能低下に合わせて、適正な投与量に調整する必要があります。では、腎機能に応じた投与量の調整はどのようにしたらよいでしょうか?
腎排泄型薬剤では、添付文書に腎機能に合わせた用量が記載されていることがあります。この場合、推算糸球体濾過量(eGFR)又はクレアチニンクリアラン(Ccr)に対応した投与量が記載されています。
eGFR・Ccrいずれの値も、血清クレアチニン値(SCr)から推算することが可能です。SCrは、血液検査でわかる値です。腎機能が低下すると上昇します。
健康診断や血液検査の結果を気にして、「ちょっと腎機能の数字が悪いみたいなんです…」など患者さんから情報を得た際は、検査値を見せてもらい処方監査に活用してみましょう。
eGFR とCcrの推算式についてご紹介します。
eGFR・Ccrはいずれも、SCrをもとにした推算式で求めることができます。
Scrについて少し詳しく解説します。クレアチニンは、筋肉中のクレアチンが分解されてできた物質で老廃物の一つです。尿素と違って、腎糸球体を通過した後、尿細管での再吸収をほとんど受けずに尿中に排泄されるので、腎機能の指標に使われます。糸球体濾過速度が減少すると、つまり腎機能が低下すると、排泄されなくなるので、SCrは上昇します。
Ccr ・eGFRは、クレアチニンを含んだ血液が糸球体で1分間に何mL濾過されるかを表したものです。
eGFRには、数値(mL/min/1.73m2)と、数値(mL/min)があります。
数値(mL/min/1.73m2)を「標準化eGFR」といい、体格を標準体型に補正することで、標準体型を基準に腎機能を評価します。このため、CKD重症度分類に用いられます。数値(mL/min)は「個別化eGFR」と呼ばれ、薬剤の投与設計時に用います。eGFRで記載されているときは、単位もしっかり見るようにしてください。
Ccrは、血清クレアチニン、年齢、体重から、Cockcroft-Gaultの式で推算することができます。肥満の患者さんや、筋肉量が低下している患者さんでは、腎機能を過大評価してしまう場合があるので、注意が必要です。
また、eGFR・Ccrどちらの推算式も女性では補正計数を忘れないようにしましょう。
腎機能に合わせた用量となっているか?処方監査するために、まずは、勤務先で腎機能が低下している患者さんに注意が必要な薬剤をあらかじめチェックしておきましょう。薬品棚に目印をつける、監査時に確認しやすいよう一覧表を作成するなどの工夫もよいかと思います。そして、あらかじめチェックしておいた薬剤が処方された際は、患者さんから検査値を聞き取り、その患者さんにあった用量になっているか評価してみて下さい。
血清クレアチン値がわからないときは、CKDの治療薬を服用していないか?糖尿病による腎機能低下がないか?加齢により腎機能が低下しているのではないか?などの予測を立て、薬理作用からくる副作用のモニタリングをしっかり行うようにしましょう。
腎機能低下により、腎排泄型薬剤を常用量服用することで、通常より血中濃度が高くなるとが予測される場合は、疑義照会が必要な場合もあります。また、血中濃度が高くなるということは、「薬理作用からくる副作用」が発生しやすいとも考えられます。
薬剤師の介入で患者さんを副作用から守ることが可能なものが多くあります。服用期間中は、定期的に体調変化を確認し、必要に応じて処方医へトレーシングレポートを提出するなど、副作用モニタリングと医師との情報共有を実践していきましょう。