【第3回】薬理作用からくる副作用の確認時期を考えてみよう

佐藤 ユリ氏NPO法人どんぐり未来塾 代表理事


副作用モニタリングをする際、服用開始後いつ頃から確認すべきか悩むことはありませんか? 副作用モニタリングが必要な発生頻度の高い副作用である「薬理作用による副作用」の確認時期は、薬の効果発現時間と合わせて考えることができます。

薬には、効き始めるまでに時間がかかる「定常状態がある薬」と、比較的すぐに効いてくる「定常状態がない薬」があります。

薬を連続服用した場合、血中から薬が無くならないうちに次回分を服用すると血中濃度は徐々に上がっていきます。しかし、薬は多くの場合、体内薬物量に比例して出ていくので、やがて薬が身体に入ってくる量と出ていく量が等しくなります。この状態を定常状態と言います。

定常状態の有無は、投与間隔と消失半減期の比で判断することができます(図1)。薬の投与間隔を消失半減期でわった値が3以下なら「定常状態のある薬」です。定常状態に到達するには、消失半減期の5倍の時間連続投与する必要があります(図2)。このため、1回の服用で薬の効き目が期待できるほどの血中濃度には達しません。

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図1:定常状態の有無の判断

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図2:定常状態がある薬

一方、4以上なら、「定常状態がない薬」と判断できます。「定常状態がない薬」は、薬が蓄積されていかないので、1回目の投与から効き目が現れます。

3~4の間の場合は、基本的には定常状態に向けて蓄積していく範囲なのですが、実際は血中濃度が上がっていかない場合もあるためグレーゾーンと考えます。

消失半減期が35時間、1日1回服用の薬剤を例に考えてみましょう。

1日1回服用なので、投与間隔を24時間とします。24(投与間隔)/35(消失半減期)で3以下なので、「定常状態がある薬」と判断できます。安定した効果が期待できるまで消失半減期の5倍の時間が必要なことから、35時間×5で175時間。つまり約7日かかると推算できます。

よって、頻度の高い薬理作用からくる副作用や薬の効果発現について、服用開始1週間後を目安にモニタリングを開始しようと考えることができます。

また、今回ご紹介した推算式を使用しなくとも、最近の添付文書では、定常状態に関する記載が書かれているものが多くなってきました。添付文書の「16.薬物動態-16.1.血中濃度」の項に、どれくらいの期間で定常状態になるのか記載されています。

薬剤服用期間中のフォローアップのタイミングを検討する際の目安として、定常状態到達時間を、是非活用してみてください。