【第2回】「副作用機序別分類」を実践し、服薬指導に活用しよう

佐藤 ユリ氏NPO法人どんぐり未来塾 代表理事


副作用モニタリングを行う中で、いつも同じ副作用確認になることはありませんか?

高血圧症で3年以上ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬を継続服用している患者さんを例に考えてみます。

降圧剤であるジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の薬理作用が過剰発現して起こる“血圧低下によるめまい・ふらつき”の確認は、常に意識しているのではないでしょうか。では、患者さんから「最近、便秘ぎみなの」と相談されたら、副作用を疑いますか?「友人から、薬の副作用で劇症肝炎になって大変だったと聞いたけど大丈夫よね」と質問されたらどうしますか?

前回、解説した『副作用機序別分類』(図1)を活用して考えてみましょう。ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の添付文書を見ながら一緒に考えてみて下さい。

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図1:副作用機序別分類まとめ

ステップ1.薬理作用を確実に捉える

ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、細胞膜の電位依存性カルシウムチャンネルに選択的に結合し、細胞内へのCa2+の流入を減少させ冠血管や末梢血管の平滑筋を弛緩させることで作用します。これが、期待される薬理作用です。

次に副次的な薬理作用がないか検討します。血管以外の平滑筋を弛緩する事で、副次的な薬理作用による副作用が起こる可能性があります。また、影響は少ないと考えられますが、心筋の収縮を抑制し、洞房結節の興奮頻度の減少や房室結節の伝導抑制が起こる可能性があります。

ステップ2.重大な副作用の機序別分類を行う

重大な副作用の項に「劇症肝炎、肝機能障害、黄疸」、「無顆粒球症、白血球減少、血小板減少」などが記載されている薬剤がありますが、これらはジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の薬理作用とは考え難く、薬物毒性もしくは薬物過敏症による副作用と考えられます。

薬物毒性か過敏症かの見極めは、検査値の推移です。PMDAから出されている重篤副作用疾患別対応マニュアルをみると、過敏症からくるもだと判断できます。また、房室ブロックは、薬理作用からくる副作用、横紋筋融解症は、多くの薬剤で見られる副作用ですが、発症機序がまだ明らかになっていない為、機序不明とします。

ステップ3.その他の副作用の気になる点を探す

循環器の副作用は、薬理作用からくるものと考えられます。浮腫は、副次的な薬理作用による副作用です。末梢動脈と静脈では平滑筋の厚さが異なり、動脈の方が厚く血管拡張作用が強いため静脈より拡張され、血液の流れが悪化し浮腫が起こると考えられています。

便秘を含む消化器の副作用は、消化管平滑筋の弛緩により起こる副次的な薬理作用と考えられます。肝臓や血液などの副作用は、その他の副作用に記載されていることから、急激な検査値の悪化が起こるとは考えられないため、薬の代謝負荷と通過刺激による薬物毒性と考えられます。

ステップ4.最後に総合的に広く検証する

血管以外の平滑筋(消化管・気管支・膀胱・子宮など)を弛緩する事で起きる副次的な薬理作用がないか検討します。また、末梢動脈での血管拡張作用が静脈での作用に比べて強いため、動脈と静脈の拡張がアンバランスになります。これらの作用の延長線上にある症状が、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の薬理作用からくる副作用です。

冒頭の患者さんの質問に対する回答を考えてみましょう。便秘の症状は、副次的な薬理作用からくる副作用の可能性があります。症状の経過について継続的なモニタリングが必要です。また、劇症肝炎は過敏症からくる副作用なので、3年以上服用して起こる可能性はかなり低いです。過度に心配しなくても大丈夫であることを伝えましょう

このように、副作用機序別分類を活用することで、服用期間に合わせた副作用情報の提供やモニタリングがしやすくなります。