三谷 徳昭氏一般社団法人 ミライ在宅委員会/委員長


処方見直しの始まりは、医師に処方提案する事ではなく「患者さんに提案を聞いてもらう」ということです。以前のコラム<第2回 見直すべきは心の中に>で述べましたが、お互いが納得したうえで医療は行われなければなりません。薬が減る事に対してどう思うか?薬1つ1つに対しても違ってきます。薬が減らせる・変更できる理由を患者さんに聞いてもらい、患者さんの考えを聞く事が大切です。

もちろん、患者さんが継続したい場合でも減量や変更が必要な医薬品もあります。患者さんの想いが事前にわかっていれば、説明や対応を変える事が出来るため処方提案はスムーズに行えます。「本当は減らしたくなかった」「変えたくなかった」ということが起きないように、最初にきちんと説明をしておくべきです。

薬を飲み始める時を想像して下さい。薬の効果と副作用の説明、用法用量、何日分、受診勧奨、疾患の詳細等、多くの事を伝え患者さんの不安を取り除き内服開始となります。最後も同じです。本人だけでなく医療者も不安が伴うため説明が不可欠です。

血圧の薬が減る時の説明を考えてみました。

「朝に飲んでいた血圧の薬が1種類、今回の処方から減っています。血圧が低く、めまいやたちくらみの症状があったため減りました。」

「処方が変わって朝食後に飲む薬は5種類から4種類になりました。今月の10日から薬が減ります。」

「血圧の薬が減ったことで、血圧が上昇する事が予想されます。1週間ぐらいかけて少しずつ薬の効果が減ってきます。それに合わせて血圧も少しずつ上昇すると思います。」

「血圧が高くなった場合、再開する事もあります。記録をきちんとつけてください。」

このような減薬による処方の変化、数値の変化予測、対応方法、フォローアップは薬剤師の腕の見せ所でもあります。処方提案して終わりではなく、その後を大切にすることで次の処方変更・見直しがスムーズに行えます。

処方変更後、忘れがちなのは「何も起きなかった事を伝える」ということです。医師や看護師は、トラブルがあると即座に反応して対処するという素質が見についています。そのため、何も起きていない場合は記憶にも残りません。

しかし、処方見直しの最高の結果は“何も悪いことが患者さんに起きなかった“という事実なのです。最高の結果を記憶に残すためにも変更後の報告は必要です。処方の見直しが安全に行われたと記憶に深く残る事で、積極的な見直しが多くの地域、多くの患者さんに広がっていく経験を私は何度かしています。ぜひ、皆様がいる地域でも広がっていく事を願っています。

さて全4回、処方見直しのススメについて話してきました。
最後に薬剤師が処方の提案をするとどうなるか?について話したいと思います。

薬の真の効果を知り、常に見直しを考えていく事で薬剤師人生が劇的に刺激的に生まれ変わります。患者さんと会話し、医師と連絡を行い、看護師さんから情報収集し、次の処方提案を考える。日常的に薬をそのまま渡すのではなく、より良いものを目指す思考に変わっていきます。提案した結果が良い方向に行かなかったり、思ったような結果にならない事も多々あります。しかし、処方せんに自分の意見や責任が伴うことで、治療に参加しているという満足感を得る事が出来ます。治療に完璧はありません。誤診をしない医者もいませんし、負けないヒーローもいません。多くの薬剤師が悩み挑戦していく事が、より良い薬物治療を生み出していくと思っています。 

一緒に処方見直しを薦めて地域医療のヒーローになりませんか?