【第4回】専門薬剤師の育成とその今後の役割

下川 友香理氏総合メディカル株式会社 上席執行役員 薬局事業本部長 学術情報部長


当社では、がん治療に携わる薬剤師の教育を行っており、がん患者が多く来局する店舗での実地研修やオンライン研修を行っています。また、当社薬剤師に対してがん治療への苦手意識についてアンケートを実施し、その結果から必要性の高い研修項目を検討しました。

がん患者のニーズに応えるためには、薬剤師が寄り添い、その苦痛を理解できる能力が求められます。そのため教育プログラムによって薬剤師の意識やスキルを向上させる必要があります。

知識については、各がん種の治療ガイドラインの理解、レジメン毎の注意事項の理解、抗がん薬による副作用への対処方法や支持療法の習得が必要です。コミュニケーションスキルについては、先輩薬剤師の応対を見学したり、ロールプレイングやコミュニケーション例を共有したりすることでスキルを磨いています。

更に実際的な薬学的介入を行うため、エビデンスの理解や実際の介入事例の分析、症例検討、エビデンスに基づいた報告方法などの指導を行っています。 患者への寄り添い方についても、患者会への参加やがん対話カフェ(前項参照)の運営・参加、ロールプレイングで患者役を演じる経験などを通じて、患者の気持ちの理解を深める取り組みを行っています。

プログラムで特に力を入れているのが症例検討です。外来がん治療専門薬剤師と研鑽中の薬剤師によるがん症例検討会を毎週開催しています。標準手順であるクリニカルパスを活用した応対の振り返りや、薬剤師の支援における障害の分析・解決支援、寄り添い方の育成を行っています。先輩薬剤師からアドバイスを受けることで、多角的な視点での薬学的介入の可能性を検討しています。また、患者の気持ちへの支援についても共に考えるようにしています。 

症例検討で出された相談事項や討議事項、そして今後の応対方針などの情報共有により、薬剤師間の連携が促進され、より効果的ながん治療へとつながっています。

以前は対面で指導を行っていましたが、さらに多くの薬剤師のがん患者応対に対する抵抗や不安を解消するため、オンライン会議システムを使用して全国の店舗にいるがんについて学びたい薬剤師を集め、学習の機会を提供しています。知識やコミュニケーション、薬学的介入、患者への寄り添い方について学びながら、薬剤師同士が連携し、知識とスキルの向上を目指しています。2023年7月現在は、31薬局52名が連携して学習を進めています。

また、薬局薬剤師のがん患者に対する貢献は、データやエビデンスとして発信することが重要だと思います。医療の質向上や患者への貢献を学会や論文などで発信することで薬剤師の価値と役割が認められ、質の高いがん医療の均てん化に薬剤師の関わりが更に進むことを期待しています。

病院薬剤師と薬局薬剤師が連携し、全国のがん患者が同じ医療・支援を受けられる環境を作り上げるためには、がんに積極的に携わることのできる薬剤師を増やし、協力の輪を広げていくことが必要です。今後も、患者のニーズに応えるための教育や研修を充実させ、薬剤師の成長とがん患者への支援を継続していきたいと考えています。