【第2回】災害時の初動とマネージメント体制の確立

江川 孝氏福岡大学薬学部 救急・災害医療薬学研究室 教授


大規模災害が発生して被災地の支援を行うことになりました。最初にどのように行動しますか?

災害が発生した時に最初にとる行動は、平時の活動からスイッチをいれて災害対応へ切り替えることから始まります。そして、CSCA(Command & Control, Safety, Communication, Assessment)に沿って災害対応のマネージメント体制を確立します。

指揮命令系統(Command & Control)は、自分が誰の指示を受けて、誰に指示を出すのかを明確にすることです。被災地には様々な職種、団体が駆けつけており、協働で救護活動を行うために、指揮命令系統を確立して縦と横の連携を構築することは非常に重要なことです。

安全(Safety)は、自己(Self)の安全を確保し、活動場面(Scene)の安全を確認して生存者(Survivor)を安全に救助することを示します。

また、多くの救護チームが情報を共有するには通信の確保(Communication)が欠かせません。通信手段の確立により、災害の規模、被災状況、経過、支援のニーズなどの情報を把握して共有することができます。

また、多くの救護チームが情報を共有するには通信の確保(Communication)が欠かせません。通信手段の確立により、災害の規模、被災状況、経過、支援のニーズなどの情報を把握して共有することができます。収集された情報を精査して評価(Assessment)を行うことは、継続的に実施され、その情報に基づき現場での活動が決定されます。災害対応で確立すべきCSCAにおいて、収集した情報を精査して行われる評価(Assessment)は、情報管理と資源管理(ヒト・モノ)について継続的に実施されます。情報の収集には、通常、必要な情報を漏れなく伝達・共有するのに情報内容の頭文字を取ったひな型であるMETHANEが用いられます(図1)。

vol21_05
拡大

図1 METHANEによる情報の評価

「MIMMS 大事故災害への医療対応―現場活動における実践的アプローチ」より一部改変

災害発生時、被災都道府県は災害対策本部を開設し、その下に医療や薬事、保健、福祉に関わる活動を調整する保健医療福祉調整本部を設置します。

令和4年7月に大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の整備について厚生労働省より通知が出され、その中で保健医療福祉調整本部の構成員として、災害薬事コーディネーターが初めて明示されました。さらに、令和5年6月に発出された「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」にて災害薬事コーディネーターは、都道府県において任命された薬剤師であると職種が指名されました。

都道府県は、大規模災害が発生した場合に、速やかに、災害対策本部の下に、その災害対策に係る保健医療活動の総合調整を行うために「保健医療調整本部」を設置します。

また、都道府県保健医療調整本部内に、災害時の医療救護活動を関係機関と連携して実施していくため、関係機関の協力の下「医療救護調整本部」が設置されます。医療救護調整本部では、災害時に被災地内で活動する医療救護班や被災地内外の医療機関における医療提供の状況等に関する情報を集約し、災害医療コーディネーター等の助言の下、医療救護活動が効率的に実施されるよう、必要な調整等を行います。

その時、災害薬事コーディネーターは都道府県薬剤師会を代表して保健医療調整本部等に参集します。そのため、都道府県薬剤師会が設置する薬災害対策本部の情報が災害薬事コーディネーターを通して直接都道府県に入ることになります。これにより、都道府県と都道府県薬剤師会の連携強化及び情報の利活用の円滑化を図り、効果的な医療救護活動が実現されます。

薬剤師は、災害時の本部活動で薬事衛生活動の調整をすると明記され、薬剤師の職能が災害対応に求められています。災害対応の本部活動で先ず優先されるのはCSCAの確立です。