江川 孝氏福岡大学薬学部 救急・災害医療薬学研究室 教授


災害対応のマネージメント体制をCSCAに沿って確立した後に行うべきコトはなんでしょう?

医療提供体制(Medical management)が確立した後は、3つのT(TTT: Triage, Treatment, Transport)で示される、選別(Triage)、処置(Treatment)、搬送(Transport)で医療支援(Medical support)が行われます。

被災地では、傷病者の状態を適切に判断して医療を提供する必要があり、Triageによって緊急度や重症度を判断して治療の優先順位が決定されます。患者の治療優先度が決定した後は、安定化のためのTreatment(処置)が行われ、傷病者の状態からTransport(搬送)が必要な場合は、被災地域外の医療機関に搬送されるのです。近年の災害では、薬事に関連した様々な問題点が明らかになり、災害現場で薬剤師がその職能を発揮することが求められています。

現在、医療提供体制(Medical management)が確立した後に行う薬事サポートの実践(Pharmaceutical Support)について3つのP(PPP: Pharmaceutical Triage, Preparation, Provide Pharmaceuticals)で対応することが提唱されています。薬事トリアージ(Pharmaceutical Triage)は、被災者の薬事ニーズを緊急度や重要度を判断して薬物治療のサポート順位を決定することです。準備・調剤(Preparation)は、災害時の医薬品供給、災害時の調剤、避難所の公衆衛生対応などを示し、供給(Provide Pharmaceuticals)は、適切な薬事支援のために必要な資機材や医薬品、服用に関する情報等を示しています(図1)。

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図1 CSCA PPPの概念図

「MIMMS 大事故災害への医療対応―現場活動における実践的アプローチ」より一部改変

被災地における薬剤師の主な活動は、①災害医療救護活動(医療救護所や仮設調剤所での調剤・医薬品適正使用)、②被災者への支援(避難所での公衆衛生・メンタルケア)、③医薬品の安定供給への貢献(医薬品集積所での医薬品管理)、④その他に大別され、災害のフェーズによって活動内容は変化します(図2)。

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図2 災害のフェーズと災害薬事活動

災害の発生直後は、緊急対応する救護班のロジスティック面での支援や被災医療機関・避難所状況・卸の状況などの情報収集をするとともに薬剤師チームの派遣準備をします。超急性期〜急性期は、薬事コーディネーターとしてDMATと連携した保健医療福祉調整本部での調整活動や支援薬剤師として救護班の薬事支援(災害時調剤、DI)災害時の拠点(支援物資の仕分け・管理)、避難所の公衆衛生・環境衛生を行います。亜急性期から慢性期にかけては、災害医療から保健医療へシームレスに移行させるために地域医療再開の支援をするほか、避難所の公衆衛生・環境衛生についての業務を公助から共助・自助へと繋ぐことが大事です。災害の発生から被災地の復興・復旧に向けて刻一刻と薬事対応は変化していきます。