【第1回】薬剤師の需給動向調査結果から考える

長谷川 洋一氏名城大学薬学部 臨床薬学教育・研究推進センター教授


2020年に厚生労働省が実施した薬剤師の需給調査では、2020年(令和2年)の薬剤師数を推計後、翌年は前年からの薬剤師数の変化と新規薬剤師数をもとに計算し、それを繰り返して2045年(令和27年)の薬剤師数を推計するという方法でした。さらに、毎年の増加分(大学進学予定者数、薬学部・薬科大学の大学定員数、国家試験合格率・合格者数、新規の薬剤師数等)、毎年の減少分(年齢別死亡率、退職年齢等)も考慮して推計されており、そして、この推計でのポイントは、18歳人口と大学進学者数の推計も考慮していることです(図1)。

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図1 薬剤師の需給推計

薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめ(令和3年6月30日)概要より抜粋

我が国の人口動態では、高齢者人口の増加、出生率の減少に直面しており、これからの経済にも不安を感じています。今のままでは確実に若い世代は減少し、人口は減少に転じていきます。我が国の人口構造の変化をみると、将来、2人が1人の高齢者を支える社会構造になるといった想定もされるほどです。

今の状況が今後20年、30年続くと考えると、薬剤師は余剰になるとの推計結果は想像できると思います。また、大学全入時代と言われていますが、当然、大学に進学する18歳人口も相対的にみると減少することが予想できます。2018年(平成30年)に文部科学省中央教育審議会が答申した18歳人口、大学進学者数の推計では、2017年(平成29年)に18歳人口が120万、大学進学者数が63万であるのが、2040年の推計値では、それぞれ88万、51万とされています。

そのような推計を踏まえると、20年後には薬学部・薬科大学への進学者数も相対的に減少するであろうことが想像できるのではないでしょうか。文部科学省が毎年度公表している修学状況調査結果からも、2023年度入学者数が定員割れをしている大学が増加傾向にあります。特に入学者が1桁の大学がある一方、入学後の退学率が最も高いところでは40%を超えています。

このような状況が今後もしばらくは続くと仮定した場合、数だけの問題では到底すまされなくなるのではないでしょうか。現在とこれからをどのように薬剤師が支えていくのか、貢献していくのか、今のままでは成り立たなくなるといった危機感をもって、真剣に考えていく必要があるのです。