【第2回】どのような価値を提供できるか

長谷川 洋一氏名城大学薬学部 臨床薬学教育・研究推進センター教授


医薬分業の進展に伴い、平成初期(1990年頃)から比べると薬局数も大幅に増加し、今や6万件超の薬局数となっています。この現状がコンビニと同等数あると比較されることがあります。しかしこれらが大きく違うのは、薬局は医療を提供する施設であり、食品衛生法による販売業の許可等が必要なコンビニではありません。

2015年に厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」を策定し、公表しました。本ビジョンでは、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を明らかにし、中長期的な視野に立って、かかりつけ薬局への再編の道筋を示しています。

また、2016年には健康サポート薬局を、2021年には認定薬局として地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局の認定がスタートしました。厚生労働省によれば、全国でそれぞれ、健康サポート薬局が2023年9月30日時点で3,123件、10月31日時点で地域連携薬局が3,968件、専門医療機関連携薬局が173件となっています。

出典:厚生労働省資料より抜粋

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakkyoku_yakuzai/index.html

薬局、薬剤師に求められているのは、昔から患者の適正な薬物療法に貢献すること、地域住民の健康をつかさどることに相違はありません。薬剤師は、「化学物質」を「くすり」にするために必要な専門職といえます。そして、今も昔も薬局はくすりと健康の情報ステーションであり、薬剤師の立ち位置は人にかかわること以外に他はありません。

一方、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延を経験し、私たちの生活の中に急速にデジタル化の波が押し寄せてきました。当然、未来志向の考えを模索し、職能を発揮することが求められますが、基本は「人」にどのようにかかわるかにかかっていると思います。言い換えれば、薬剤師が人にどのような価値を提供できるかだと思うわけです。

今後、人口が減少していくであろう我が国の未来を考えると、利便性や効率性の観点からもデジタル化を避ける理由はありません。何が正解かはわかりませんが、一人ひとりの患者、地域住民に寄り添う気持ちと行動から、きっと新たな価値が生まれるのではないでしょうか。