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【第3回】性成熟期
中村 由喜氏TAYA研究会 代表/あおぞら薬局富士見店 管理薬剤師
性成熟期は女性特有の妊娠・出産をめぐり、たくさんの課題に直面します。健康であると同時に、自身のヘルスリテラシーが肝要です。薬局においても、女性の生涯を通じた健康を支援するために、セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)やプレコンセプションケアといった概念を広く社会に浸透させ、健やかな妊娠・出産につなげる取り組みが求められています。
セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)は、「性と生殖に関する健康と権利」と訳され、1994年に国連の国際人口開発会議において概念が提唱されました。その精神は、性や子どもを産むことに関わる全てにおいて、身体的にも精神的にも社会的にも本人の意思が尊重されるべきであり、自分の身体に関することは自分自身で選択し、決められる権利であるというものです。
プレコンセプションケアは、将来の妊娠を考えながら女性やカップルが性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、自分たちの生活や健康に向き合うこととされています。
こうした概念に基づき、妊娠前の女性のやせや肥満、出産年齢の高齢化などといった課題に取り組み、健やかな妊娠・出産につなげることが重要です。
私たちの薬局では、妊娠を望まれる方のサポートのために、保険適応になった不妊治療の資料を掲示したり、妊娠する前から葉酸を摂取することの重要性を考えてもらうため、二分脊椎についての情報を掲示しています。また、妊娠時期に必要な葉酸や鉄剤などのサプリメントの販売も行なっています。
一方で、望まない妊娠を回避するために、私たちの薬局では、緊急避妊薬の周知についても取り組んでおり、厚生労働省が行なっている緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る環境整備のための調査事業に2023年11月末から参加し、薬局での緊急避妊薬販売を行なっています。薬を求めて来局する患者さんには、緊急避妊薬を服用することで、排卵の抑制や遅延、排卵後であれば受精の抑制作用があること、すでに着床していれば効果がないこと、悪心・嘔吐などの副作用報告があることなどを説明するとともに、服用後3週間経過しても月経がない場合は受診が必要であることなどを指導しています。来局者の状況に配慮し、薬の情報提供や販売を行うだけでなく、相談者の心理的状態にも配慮したうえで、関係機関と連携するように気を付けています。
私個人の活動の中では、学校薬剤師として、高校生への性教育を「生きるための教育」と題して担当校で実施しています。妊娠のしくみ、避妊方法、緊急避妊薬、人工中絶、性感染症などの正しい知識習得を目標に行っています。コンドームの正しい使い方や、正しく使用しても妊娠する可能性があること、性感染症には効果があることなど具体的な内容を伝えています。
今回は性成熟期として女性特有の妊娠・出産を取り上げましたが、女性は30代後半から徐々に卵巣機能が低下し始め、また、不妊治療の保険適応も年齢による制限があります。妊娠や出産について早い時期から正しい情報を得ることが重要になります。
次回は、女性ホルモンが減少する更年期、「充実した人生100年時代」への老年期についてです。