- トップ >
- 学び >
- 薬剤師へ エキスパートが届けるメッセージ >
- Vol.25 これからの薬局に求められる機能と薬剤師の役割(全4回) >
- 【第4回】デジタル治療(DTx)と薬局
【第4回】デジタル治療(DTx)と薬局
赤池 昭紀氏和歌山県立医科大学薬学部教授、京都大学名誉教授
医療デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、多様なデジタル医療機器が医療現場に導入されています。その中でも、エビデンスに基づいて開発・承認された治療用プログラム、すなわちデジタル治療(DTx)が注目を集めています。DTxは、医師が処方したアプリを患者のスマートフォンにインストールして治療を行うものです。アプリを介して健康情報や日常行動を医師と患者が共有し、アプリから生活改善の行動が助言されるなど、患者の行動変容を促すことにより治療が進みます。また、視覚などの感覚刺激による治療を行うアプリも存在します。
2024年現在、日本で承認されたデジタル治療(DTx)に相当する治療アプリは3品目(禁煙治療補助システム、高血圧治療補助プログラム、不眠障害用プログラム)に限られますが、米国では50品目以上が承認されており、将来は日本でも多くのDTxが承認、保険適用されると予想されます。しかし、DTxの普及と適正使用の実現にあたって、患者が一定のデジタルリテラシーとヘルスリテラシーを持ち、アプリを継続的に使用することが必須となります。医師によるサポートが不可欠であることは言うまでもありませんが、それに加えて、患者がDTxを長期にわたり適正に使用するために、服薬指導と同様に薬剤師によるきめ細かいサポートが重要と考えられます。
このような背景のもと、令和5年度(2023年度)に、京都府庁・京都府薬剤師会は、厚生労働省委託事業の「デジタル治療(DTx)に臨む患者への薬局支援の有用性検証事業」を実施しました(図)。
![vol25_05](/medical_content/learning/ph_expert/vol.25/vol25_05.png)
デジタル治療(高血圧治療補助プログラム)を受ける患者に対する薬局薬剤師の支援
出典:京都府「デジタル治療(DTx)に臨む患者への薬局支援の有用性検証事業」についてに掲載された事業結果リーフレットより抜粋
この事業で、薬局薬剤師はアプリに関する専門的な研修を受け、アプリの操作方法やデータの読み取り方を習得しました。これを活用して患者の健康状態をモニタリングし、異常があれば即座に対応し、治療へのモチベーションを高めるために定期的なフォローアップを行いました。薬剤師支援を受けたすべての患者が1ヶ月後にもアプリを継続使用しており、アプリを使った治療の継続への不安も解消されるという結果でした。
京都府の検証結果を踏まえると、DTxの効果的な導入と普及には薬局薬剤師の参画が極めて重要であると考えられます。薬剤師がDTxに関する知識と技能を習得し、患者に対する適切なサポートを提供することで、患者の治療継続率を向上させることができます。また、薬剤師が医療チームの一員として、医師やその他の医療専門職と連携しながらDTxを活用することで、より包括的かつ効果的な患者ケアが実現するでしょう。
今後、薬局薬剤師がDTXの普及と発展において重要な役割を果たし、デジタルヘルス時代の新たな医療モデルを支える存在となることが期待されます。