【第1回】患者に理解されていない薬局薬剤師の存在意義

山口 育子氏認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML / 理事長


認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML<コムル>(以下、COML)は、患者の自立と主体的な医療参加を目指して1990年に活動をスタートしました。30年を超える活動のなか、地道に継続してきたのが患者・家族からの電話相談です。これまでに届いた相談は、約64,000件。活動を始めて以来、定点観測のように患者・家族のなまの声に耳を傾けていると、患者の意識が大きく変遷を遂げてきたことを実感しています。それにつれて、電話相談に届く項目も変化を遂げてきました。しかし薬に関する相談の全体に占める割合はさほど変化はなく、自分で服用したり使用したりするだけに、常に関心が高いことを実感しています。

ところが、非常に残念なのは、薬に関する相談のなかに薬剤師が登場することがほとんどないことです。いまだに薬の情報も医師に求めていることが相談から窺えます。私は薬に関する相談が届くと、必ず「薬剤師さんからどのような説明がありましたか?」と確認するようにしています。相談者に薬剤師の存在をしっかり認識してもらいたいからです。ところが、相談者からは「薬剤師って、薬を渡すだけの役割でしょ?」「薬剤師に何が期待できるのですか?」といった反応が多いのが現状です。

特にここ数年、病院薬剤師と薬局薬剤師では存在感や役割が大きく異なって患者の目に映るようになってきたと感じています。

まず、病院薬剤師は日本病院薬剤師会による専門薬剤師、認定薬剤師の認定で、専門性の高い薬剤師が増え、活躍するようになってきました。

例えば回診時に医師に同行してベッドサイドにやってきて、抗がん剤の使用について医師にアドバイスしているがん専門薬剤師の姿を見れば、医薬品に関する知識は医師よりはるかに高いことが一目瞭然で理解できます。また緩和ケアチームや栄養サポートチームとして診療報酬を得るためには、薬剤師がチームの一員であることが算定要件です。更に薬剤師の病棟配置が進むなかで、薬剤師が患者のベッドサイドに登場する機会が増え、具体的な役割を発揮して患者に“姿”が見え始めています。

一方、薬局薬剤師は二極化する傾向にあると私は感じています。地域や在宅に出かけ、積極的に多様な役割を果たしている薬局・薬剤師がいる一方で、まだまだ多くの薬局は流れ作業のように調剤業務のみに偏重していて、患者はあまり存在意義を見出せていません。医薬分業率が全国平均で7割を超え、患者は薬局を利用する機会が格段に増えているにもかかわらず、医薬分業の恩恵を実感している国民は少ないのが現実です。