【第2回】役割の“見える化”を

山口 育子氏認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML / 理事長


前回、患者の目に病院薬剤師と薬局薬剤師では同じ職種でも異なる姿に映り始めている。病院薬剤師は患者から“見える存在”になってきている一方で、薬局薬剤師は旧態依然とし、薬局そのものが二極化する傾向にあるとお伝えしました。

それではなぜ、薬局薬剤師への期待が高まらないのでしょうか。患者自身が直接服用・使用するだけに、前回指摘したように、本来薬への関心は高いのです。しかし多くの患者は、薬局薬剤師の役割と存在意義が理解できていないために、薬局を十分活用できていないのだと思います。その原因は、薬局薬剤師の役割の“見える化”がはかれていないことに大きな原因があると私は考えています。

私が考える薬剤師の基本的役割とは、①医薬品の情報提供、②薬剤服用歴管理、③疑義照会、④残薬整理と受け止め、機会があれば一般の人に「最低限の役割を理解しましょう」と伝えています。

まずはこのような4つの役割を解説した手作りの文書を作成し、患者に渡す薬が入った袋のなかに入れて「時間があるときにご家族と一緒に読んでくださいね」と渡すだけでも、役割の理解が進むのではないかと思います。そのように薬剤師の役割についての理解が深まれば、街の薬や健康の相談相手として存在意義を見いだせると思うのです。

2014年に薬剤師法が改正され、単なる薬剤情報提供ではなく、薬学的知見に基づく指導が薬剤師の義務になりました。ということは、これまで以上に確かな情報を得たうえで、しっかり患者を理解し、踏み込んだ情報提供が求められているわけです。上記の①~④の役割が理解できれば、薬局で詳しく病気のことを聞かれても「なんで薬局でも病気のことを聞かれるのか」と不満を述べる患者は減るでしょう。また、複数の医療機関にかかっている場合、かかりつけ薬局を決めて処方せんを1ヵ所にまとめる必要性も理解できます。複数の薬局を利用せざるを得ないときでも、少なくともお薬手帳を1冊にすることの理解が得られるわけです。

それだけに、薬剤服用歴管理をして使用した医薬品の履歴のみならず、副作用やアレルギーが生じた場合にも記録していること。それらの情報も踏まえながら、処方された薬の鑑査をし、必要に応じて疑義照会していることは患者にしっかり伝える必要性があります。

ただ、私が残念に思っていることの一つに、この薬剤師法の改正の後も、薬局薬剤師が手にしている情報は、依然として病名も病状もわからない処方せんと患者から得る不確かな情報だけです。なぜもっと患者の詳細がわかる情報を医療機関と連携して手に入れようとしないのか、医療機関と情報の共有ができるシステム作りを求める声が薬剤師からあがらないのかが不思議でなりません。