【第3回】フォローアップ業務をチャンスに

山口 育子氏認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML / 理事長


2018年に厚生労働省の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で、私は構成員の一人として薬機法の改正に関係する議論に参加しました。このとき、薬機法の改正よりも多くの時間が割かれて紛糾した話題は「薬局と薬剤師のあり方」でした。

このなかで、私は薬剤師が患者の薬の服用期間中にフォローアップする必要性を薬機法に書き込んで義務化すべきだと発言を繰り返しました。それは薬剤師の本来の業務だと考えているからです。ただ、最初から法律に書き込むべきと考えていたわけではありません。そのような当然の役割は、法律に書かなくてもルーティンワークとして実施されるのが当然だと思っていました。

なぜなら、新しい薬が医師から処方され、薬剤師が調剤して渡した段階では、患者には何の変化も起きていません。しかし、調剤された薬を服用・使用し始めてから効果や副作用が生じるわけです。薬のプロであれば、患者にどのような変化が起きているのか気になるのは当然だと思っていました。

しかし、服用期間中のフォローアップをしている薬剤師はまだまだほんの一部で、当たり前の業務になる気配が感じられませんでした。自浄作用を待っても始まらないのであれば、服用期間のフォローアップを当たり前にするために法律のなかに位置づける必要がある――そう考えたのです。もちろん、すべての患者のフォローアップが必要などと無理難題を言うつもりはありません。どのような患者に必要なのかを見極めたうえで取り組んでもらいたいと思っています。

服用期間中のフォローアップについては国会に提出された法案が通り、実際に薬機法のなかに組み入れられました。その直後から、複数の薬局薬剤師から「薬機法にフォローアップが入ったことで当たり前の役割としてできるようになる」という声が聞かれました。つまり、やりたくても「調剤報酬にならないことに取り組むな」という薬局の方針で抑えられていた状況もあったようです。

いずれにしても、服用期間中のフォローアップが始まると、患者から見える薬局薬剤師の姿が確実に変化すると私は確信しています。「えっ? 薬剤師さんが服用後のことを心配して、連絡くれるんですか!?」と感激し、身近な存在と認識するようになると思います。その機会を利用して、薬剤師の役割の“見える化”を進めてもらいたいと期待しています。