【第4回】今こそ国民を味方にする最後の機会

山口 育子氏認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML / 理事長


2016年4月の診療報酬改定で、かかりつけ薬剤師指導料が新設されました。ちなみに私は、個人的には“かかりつけ薬剤師”より“かかりつけ薬局”として認められるべきだと考えています。電話相談には、同意書へのサインを求められる精神的負担や、患者が選べないかかりつけ薬剤師についての苦情も届いています。なぜ、医師や歯科医師をかかりつけとして選んだときに同意書なんていらないのに、薬剤師には必要なのか。なぜ、勤務表を渡されて「今日、かかりつけ薬剤師は勤務しているだろうか」とわざわざ確認しないといけないのか。複数の薬剤師がいれば、どの薬剤師が対応しても情報を共有して、適切な対応をしてくれる薬局こそが患者には有益だと思っています。それだけに、薬剤師から「本来はかかりつけ薬局が認められるべきではないか」という声があがることを期待しているのですが…。

また、同年10月から健康サポート薬局の公表が始まり、更に「患者のための薬局ビジョン」アクションプランも発表されるなど、薬局改革の必要性が叫ばれています。
特に、薬局ビジョンでは2025年までにすべての薬局にかかりつけ薬局の機能を持たせるとされています。つまり、裏を返せば、健康サポート薬局を公表する際に整理された“かかりつけ薬局”の機能を果たしていない薬局は、2025年以降は薬局として認めないと言っているのも同然だと私は受け止めています。

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厚生労働省提出資料2019年5月より

高齢化が加速し複数の疾患を抱えた患者が増えるなかで、ポリファーマシーの問題が浮上しているように薬物療法も複雑になってきました。それだけに、街の頼れる薬の相談相手として、私は薬局も薬剤師もなくてはならない存在だと思っています。しかし、遅々として進まない薬局改革に、患者の立場ながら私は薬局の置かれている現状に危機感を覚えているのです。

「ウチは前向きに地域に出て一生懸命取り組んでいる」と安心するだけでなく、地域をあげて薬局全体の意識改革をはかっていかないと“共倒れ”になる瀬戸際にきていると、私はここ数年薬剤師の方々に訴え続けてきました。それを打開するためには、何より国民を味方につけ、「薬局がないと困る」「薬局薬剤師は頼れる存在」と思ってもらえる存在になることだと思います。そのためには、たまたま利用した薬局が満足度の高い薬局である確率を高めなければなりません。薬剤師の臨機応変なコミュニケーション能力の向上とともに、役割の“見える化”をはかり、かかりつけ薬局として頼れる存在へと危機感を持って取り組んでいただきたいと思います。