【第4回】インスリンデバイス手技のフォローアップはスモールステップで大丈夫

佐竹 正子氏クラフト株式会社 糖尿病領域顧問 / 星薬科大学薬動学研究室 / 博士(薬学)


糖尿病薬物療法のひとつにインスリン注射療法がありますが、2021年は、1921年夏にトロント大学でインスリンが発見されてから100年目の記念すべき年です。この100年間にインスリン製剤は飛躍的に進歩して、健康な人のインスリン分泌動態に近づけるようになりました。またインスリンデバイスも進化して、安全に簡便に視覚障害や手指機能障害があっても注射しやすいデバイスも研究され登場しました。その結果、インスリン注射療法は1型糖尿病患者だけでなく2型糖尿病患者へも、合併症予防として積極的に使用されるようになっています。従来、インスリン導入は、入院してインスリン注射手技を覚えて自己注射開始でしたが、デバイスが簡便になったことから、最近では多くが外来導入となっています。患者は病院や診療所の医療機関でインスリン手技指導を受けてきますが、処方箋を応需して受診から帰宅までで最後に患者と接する医療人である薬局薬剤師が、積極的にインスリン手技についてフォローアップを行うことが期待されています。

インスリン注射手技は大きく分けて、「準備」「空打ち」「注射」「廃棄」「保管」に分けられます。

「準備」は、針装着の前にデバイス内の逆血有無の確認をして、針を正しく装着します。高齢者では手指振戦があり、内針がゴム栓を貫通していないこともあり注意が必要です。また、懸濁製剤はガラス球を意識して充分に撹拌しないと、インスリン濃度にばらつきが出て、正確なインスリン単位が注入できず、濃い場合は低血糖の原因となります。

「空打ち」は、注射筒内の空気抜きが大きな目的ですが、液が針先から出ることで、デバイスが正しく作動しているか、内針がゴム栓を貫通しているかの確認となります。

「注射」は、インスリンを皮下に注入する作業ですが、ポイントは、腹部ローテーションと注入完了までタイムラグがあるため注入ボタンを必要秒数数えて長押しすることです。注射部位は吸収の早い腹部へ行い、お臍の周りを2-3センチずつ前後と上下にローテーションして注射します。注射部位を変えずに注射しやすい同じ位置に注射をする患者もおり、同じ場所への注射はリポハイパートロフィーやインスリンボールという結節や硬結など腫瘤ができやすくなり、その部分のインスリン吸収が悪くなります。その結果同じ単位の注射でも腫瘤部と非腫瘤部でインスリン吸収量が違い、低血糖発現の原因となるので注意が必要です。

「廃棄」は、針刺し事故防止のためにも正しい針の廃棄方法を確認・説明しましょう。

「保管」は、インスリン製剤の未使用は冷蔵庫で、使用中の製剤は室温保管となっています。

インスリンデバイス手技を難しく考えすぎず、5つのパートのどれかを患者と一緒に確認しながら服薬指導することで適正使用となり、血糖コントロール改善や低血糖予防にも結びつきます。薬剤師が調剤後の糖尿病薬継続管理を行うことで、糖尿病治療の地域連携医療に貢献できると思っています。