【第3回】シックデイ指導は健康なうちから。配合薬にも注意しましょう

佐竹 正子氏クラフト株式会社 糖尿病領域顧問 / 星薬科大学薬動学研究室 / 博士(薬学)


糖尿病患者が、糖尿病以外の急性期疾患に罹患した状態をシックデイといいます。一般的には急性期疾患に罹患すると、ストレスにより糖質コルチコイドが増大し、高血糖となります。しかし、呼吸器疾患、消化器疾患など発熱、悪心、嘔吐などを伴い食欲不振により、食事摂取量が減少したにも関わらず、指示量の糖尿病薬を注射や内服すると低血糖を発症します。このようにシックデイの時は高血糖や低血糖など血糖値が乱高下するので注意が必要です。

シックデイとなった時は、まず脱水予防として水分と電解質を摂取することが大切になります。利尿薬を服用している場合は、脱水を助長させる原因にもなるのでさらに注意が必要です。シックデイになった時の対応を「シックデイルール」といい、シックデイルールの基本は下記になります

基本的なシックデイルール

  1. 保温、安静にして無理に運動は行わない
  2. 水分補給を行い、発熱や下痢・嘔吐などによる脱水を防ぐ
  3. 脱水による電解質異常を防ぐために、食欲がなくても口当たりがよく、消化のよいものを摂取する(おかゆ、味噌汁、スープ、アイスクリームなど)
  4. 食事摂取量により糖尿病薬(内服・注射薬)を調節する
  5. 改善がない場合は、医療機関を受診させる

出典:【くすりと糖尿病 Vol.10 Suppl.2021 第7章 糖尿病薬適正使用のためのシックデイルール指導のてびき】より引用改変

医療機関受診のめやすは、38度以上の発熱時や消化器症状が強い時などで、経口摂取が出来ない時は速やかに医療機関を受診するように説明しておくとよいでしょう。

シックデイルールの食事摂取量にあわせた糖尿病薬の減量調節は、医師の指示となります。薬剤師が指示することはできないので、患者にシックデイ時の薬剤調節量を医師から聞いているかの確認を必ずしてください。聞いていない場合は、患者に必ず医師へ確認させ、指導を受けた指示量を薬歴簿へ記載することも忘れないようにしましょう。患者から、かかりつけ薬剤師へシックデイ時に電話が来た場合に、薬歴簿に記載があれば対応することが可能になります。

シックデイ時のインスリン調節の基本は、基礎分泌に相当する中間型や持効型インスリン製剤は、注射の継続を原則とします。追加分泌となる超速効型や速効型は、食事量とくに糖質量により調節を行い、食事不安定時期は食直後の注射により、低血糖を回避するようにします。内服薬の調節量で特に低血糖に注意が必要なのは、インスリン分泌系血糖非依存性のSU薬とグリニド薬になります。また、脱水により乳酸アシドーシスを誘発しやすいビグアナイド薬はシックデイ時には全て休薬となります。ビグアナイド薬単剤への注意だけでなく、配合薬にも含まれているので、配合成分を把握して調節が必要な薬剤かどうか十分に注意しましょう。経口薬の減量のめやすは下図をご参照ください。

シックデイの服薬指導は食欲不振時に、患者がそのまま指示量を服薬して低血糖発症を予防することですが、シックデイになってから患者が慌てて医師へ確認しなくても済むように、健康な時からシックデイ時の調節量を医師に確認するように服薬指導することも、大切なシックデイ対策だと思います。