第1回 統合失調症薬物治療におけるPK/PDの重要性

PK/PD理論から考える抗精神病薬の使い方

統合失調症をはじめ、抗精神病薬による薬物治療を行っても、臨床効果や有害事象の発現は患者さん個々によって異なることが知られています。
本コンテンツでは、その要因を薬物動態学(pharmacokinetics)と薬力学(pharmacodynamics)の視点から、千葉大学名誉教授 伊豫 雅臣先生に解説いただきます。

統合失調症薬物治療におけるPK/PDの重要性

伊豫 雅臣 先生

千葉大学/名誉教授

統合失調症をはじめ、抗精神病薬による薬物治療を行っても、臨床効果や有害事象の発現は患者個々によって異なることを経験しています。
その要因を薬物動態学(pharmacokinetics)と薬力学(pharmacodynamics)の視点から考える必要があるのではないでしょうか。
今後の精神科医療において、薬物療法を考える際には薬物動態学理論・薬力学理論をもとに、状況に応じた選択・工夫を行うことが重要だと考えます。
本シリーズでは、PK/PD理論に基づく抗精神病薬の使い方を、次のポイントで考えていきます。

  • PK/PDの基本的な考え方
  • 各領域の治療薬
  • Concentration Stability(CS)率
  • 線条体ドパミンD2受容体占有率

今回は、PK/PDの基本的な考え方を整理してみたいと思います。

抗精神病薬の治療効果と副作用発現に関する考え方

PK/PD理論から抗精神病薬の治療効果と副作用発現について考えてみましょう。
統合失調症患者さんは食事が不規則であったり、消化管の状態に不安があることがよくあると思います。
そのような場合、薬物が十分に吸収されないことがあるため、必要な薬物濃度を確保できず、その薬剤が持つ本来のポテンシャルを十分に発揮できていないかもしれません。
また、代謝酵素に影響する薬剤の併用や嗜好品の使用により、薬物濃度に影響がある可能性があります。
そして、患者さん個々で薬物に対する感受性が異なることも知られています。
このようなPK/PDに関わる様々な因子によって、抗精神病薬の治療効果と副作用発現に差が出ると考えられます。

経皮吸収型製剤の特徴

食事や消化管の状態に影響を受けない剤形として、注射剤や経皮吸収型製剤があります。経皮吸収型製剤は、経口薬と違い、薬物が消化管や肝臓を介さずに血中へ移行します。
そのため、薬物血中濃度を確保しやすく、安定した効果を発揮することが期待されます。

さらに経皮吸収型製剤は薬物が持続的に吸収されるため、薬物血中濃度推移が安定します。
一般的に、血中濃度推移が安定する薬剤は、効果が安定することに加え、血中濃度依存的な副作用が出にくいと考えられています。

ロナセンテープとロナセン錠の血中濃度推移の違い

ここで、ロナセンテープとロナセン錠の血中濃度推移を確認してみましょう。
反復投与後の定常状態においてロナセンテープでは、ロナセン錠のような服薬直後の一時的な血漿中濃度の上昇がなく、24時間の貼付時間を通じて概ね一定の濃度が維持されると考えられます。
よって、長時間にわたり血漿中濃度を維持することが示唆されました。

※「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。

ブロナンセリンの受容体結合特性

こちらは本邦で上市されている主な抗精神病薬の受容体結合親和性を示しています。ブロナンセリンはドパミンD2受容体、ドパミンD3受容体およびセロトニン5-HT2A受容体に選択的な受容体親和性を有し、アンタゴニストとして作用します。

一方、眠気、体重増加、糖代謝異常、認知機能障害などの副作用に関与するアドレナリンα1やヒスタミンH1、セロトニン5-HT2C、ムスカリンM1・M3 受容体に対する親和性は低いことが知られています。

PK/PDから考えるロナセンテープの臨床的意義

このような観点から、ロナセンテープが持つPK/PDの特性が、統合失調症治療の急性期でも維持期でもフィットすると考えています。

救急/入院(急性期治療)

急性期治療では抗精神病薬を十分量/十分期間投与し、精神症状の早期改善が求められます。
ロナセンテープは、通常40mg/日で使用開始しますが、患者さんの状態に応じて初日から承認最大用量の80mgを貼付でき、さらに定常状態において血中濃度推移が安定することから早期の症状改善が期待できます。

外来(維持期治療)

維持期治療では再発・再燃を防ぐことが重要であり、ドパミン過感受性精神病(DSP: dopamine supersensitivity psychosis)を発症させない薬物治療が求められています。統合失調症治療において、血中濃度推移が安定することで日常の些細なストレスによる精神症状の揺れを最小化し、再発・再燃を予防することが期待されます。

先生方、いかがでしたでしょうか。
ぜひPK/PDを考慮した薬物治療を実践し、よりよい統合失調症治療を目指していきましょう。

■ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験■
(ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験)

ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験 (ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験)

ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験 (ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験)

統合失調症患者を対象としたロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験の結果はこちらからご覧ください。

※「警告 ・ 禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。


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