【POINT.1】病棟業務通じ医師や看護師からの信頼を得て、向精神薬の減量に積極的に介入

谷藤 弘淳 氏医療法人有恒会こだまホスピタル/薬剤副部長

「入院医療中心から地域生活中心へ」との流れの中で、求められる薬剤師の役割

精神科病院では「入院医療中心から地域生活中心へ」という流れのなかで、全国的には入院患者さん数は減少傾向にあります。そのなかで精神科の入院医療は以前とは大きく変わり、早期退院、社会復帰を目指した薬物療法を行い、いかに再入院を減らしていくかが焦点となっています。そのため現場ではスピーディな薬物療法に向け、病棟における薬剤師の役割が強く求められています。

薬の切り替えなど慎重な検討が必要だが、早期退院に向けスピーディな対応も重要

実際に薬を切り替える場合、既存の薬を減量しながら、新しい薬に替えていく必要があります。その際には精神症状悪化や副作用、リバウンドといったリスクもあり、本来は慎重な判断、対応が必要です。できれば、1ヵ月単位で様子をみるなど、ゆっくり進めたいという思いはあります。

しかし、入院治療期間が例えば3カ月と当初から予定されていることも多く、副作用リスクに配慮しつつも、その薬が患者さんに合うかどうかを慎重かつ専門的に評価することが重要ですので、薬剤師も最初から入院患者さんに対するチーム医療に参画する必要があります。また、そうしなければ薬物療法の最適化は難しいと思います。そのため当院では患者さんが入院してきた段階で、多職種によるカンファレンスを行い、そこに薬剤師も参加します。薬剤師は持参薬管理も担当し、医師へ代替薬処方の提案をしています。

病棟では持参薬処方の代替案の提案から始め、担当医とともに処方内容の検討へ

当院では薬剤師は4名、補助員が2人とマンパワーが厳しい中ですが、私が一番注力しているのは病棟業務です。当院に入職した2015年から少しずつ進め、現在は患者さんへの服薬指導や、看護師の薬剤に関する相談に対応しています。医師との関係では、「この方の薬物療法で何かいい手はありますか?」「こういう薬を出したいのですが、どう思いますか?」と相談を受け、一緒に処方を検討するなど機会が増えています。ただ入職当初は、持参薬処方の代替案をもって医師に直接会い、お話しすることから関係づくりを始めました。

具体的な連携事例として、2019年のことですが、統合失調症で多剤併用の患者さんに対する減量化を試みました。単純に投与量等の比較データを基に減量を提案しても、一般的には受け入れてもらえないケースは少なくありません。しかし、その医師の担当患者さんについて、以前、減量に成功したという事例もあり、「お任せします」と合意を得ました。多剤大量投与の減量を行う際には細かな減量を段階的に行う必要があるため、減らすべき薬剤の選定・スケジュールを含め、医師に経過を報告しながら1年以上かけて薬剤師主導で進めました。減薬を含めて処方提案していくことはタスク・シフト、医師の負担軽減につながると思っています。

タスク・シフト/シェア推進に関する検討会 議論の整理の公表について(令和2年12月23日)別添2より抜粋

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000709445.pdf