【POINT.2】患者さんの話を傾聴し、「近くにいる存在」と認識してもらう努力と工夫が大事

谷藤 弘淳 氏医療法人有恒会こだまホスピタル/薬剤副部長

診察前の「外来面談」を実施し、医師の負担軽減やタスク・シフトにつなぐ

外来患者さんについては、3ヵ月間という集中的な事例ではありますが、2019年頃に入院中に関わっていた3人の統合失調症患者さんを対象として、「薬剤師外来面談」を試みました。退院後の外来通院時、患者さん(家族も同席)と診察前に面談し、DIEPSS(薬原性錐体外路症状評価尺度)、DAI-10(薬に対する構えの評価尺度)を月に1回評価し、その内容をカルテに入力、医師の診察につなぐというものです。

そのうち1人の患者さんは50歳代男性で、「退院したら薬はやめたい」という訴えがありました。退院後、来院毎に面談し、フォローすることで症状の悪化はなく経過しました。この取り組みは医師から一定の評価を得て、負担軽減にもつながったと思います。ただ、面談が終わった途端に、通院が途切れてしまった患者さんもいました。

面談終了後も通院継続できるよう、かかりつけの薬局・薬剤師に申し送りする、あるいは予め情報共有をしながら、外来面談を実施した方が良かったのではないかと感じました。家庭環境や経済的なことで患者さんが通院できなくなるケースもありますので、薬剤師間の連携だけでなく、広く包括的な支援の必要性を感じています。

「飲みたくない!」の訴えに感謝し、共感を心掛けることが関係性づくりに大事

私は県病院薬剤師会では精神科の担当ということもあり、地域での連携推進も念頭に研修会や勉強会を企画し、お話しする機会があります。近年、地域における精神疾患の患者さんが増え、保険薬局の先生方も患者さんに会う機会が増えているためか、精神科系の研修会に参加される先生方が増えています。その中で患者さんへの対応の仕方に関するご質問を多くいただきます。

例えば統合失調症の患者さんには、体や足がソワソワ、イライラするといった副作用・アカシジアの影響などで「薬を飲みたくない」という方が少なくありません。その時にどうしたらよいかなどです。

まず患者さんが正直に訴えてくれたことに感謝し、その気持ちを受け止めることが大事です。「それはだめですね」あるいは「薬を飲まないといけないですよ」など、指示的に接してしまうと患者さんは「自分のことを理解してくれない」と認識し、その後は相談を止める可能性があります。そこで「確かに薬を続けるのは大変ですね。よろしければ、なぜ飲みたくないのか理由を教えていただけますか」など、患者さんの話しに耳を傾け、共感を心掛けながら、理由を尋ねることが大事です。

幻覚や妄想などが理由であれば、医師と情報共有し、対応していく必要があります。副作用など問題解決が可能かどうか、患者さんと共に考える姿勢を示し、少しでも不安を和らげてあげることも重要です。患者さんの苦しみを理解し、支えようとする姿勢で接することが信頼関係構築のきっかけになると思います。勿論、薬はきちんと飲んでもらうことは重要ですが、逆に「飲んでないよ」と言ってもらえる存在になることも大事かなと思います。

日常的な薬の管理・サポートと、トレーシングレポート活用した情報交流に期待

入院患者さんの中には、自分で勝手に調整したり、飲んでいなかったりと、薬の管理がバラバラで雑然と残薬を持ってくる方が少なくありません。保険薬局の先生方には、日常的な薬の管理をしっかりサポートしていただけると助かります。ただ、問題や課題があっても、医師との直接的なやり取りが難しい面もあると思います。病院には病院薬剤師がいますので、私たちを利用してもらえればと思います。その一つとしてトレーシングレポートの活用が期待されます。一方、病院薬剤師側も保険薬局の先生に情報を伝えるという、相互の情報交流が重要だと思っています。