【POINT.2】新型コロナの影響下でも何らかの方法で、医療機関・医師との連携を模索

鈴木 弘道 氏アルテ薬局/管理薬剤師

時代に合わせSNSの匿名性も活用し、患者さんとの“つながる場”を用意

薬袋にはLINE公式アカウントの2次元コードを印刷

薬は継続して飲むことが大事ですが、次に来局するまでの間は、極力、コンタクトを取らないようにしています。ご自身で心配な患者さんは、電話をくれます。ただ、薬局を開業した時に、SNSは患者さんと気軽につながれるツール(場所)であろうと考え、薬局のLINE公式アカウントを開設しました。薬袋に2次元コードをつけて、少しずつ登録してもらっています。よくある使われ方は、事前に処方箋の写メを送ってくるパターンですが、「夜の薬を朝飲んじゃった」など、故意ではない飲み間違いの問い合わせは多く寄せられます。なかには薬を飲んだ後の体調変化についての報告、薬の飲み合わせの確認や依存性の心配事、副作用が出たときの対応などについて質問が来ます。まだ頻度はそれほど多くありませんが比較的若い層の患者さんが利用しています。

LINEではヘビー級の内容はあまり来ません。薬局には、「今からどうしようかと悩んでいます・・」と、自殺を仄めかすような電話をかけてくる患者さんもいます。そういう場合は、とにかく聴く。

そして「辛いね。でも次の外来を待ってるよ」「先生も待ってるよ」と、思い止まらせる対応になり20分、30分とかかります。もし、こちらから電話を切りたいという素振りがあれば、患者さんに伝わってしまいます。相手が電話を切るまで待ちます。私たち薬剤師が、自殺に関して何ができるか分かりませんが、とにかく傾聴するようにしています。

新型コロナの影響で“症例検討”は途切れているが、毎朝の“挨拶”で意見交換

厚生労働省では近年、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進しようとしています。そこで水戸市ではどのような取り組みをしているかを最近、市の担当に伺いましたが、未だどうしていいか分からない状況のようでした。市内の精神科病院ではどうしているのか、何人か知り合いの先生にお尋ねしましたが、「特にやってない」という状況でした。後輩がいる茨城県立こころの医療センターでは若干、取り組みをしているようですが、地域連携にまでは広がっていないようです。ただ、病院側では「もし連携を考えているのなら、仲間になってほしい」と、薬局側が手を挙げ、行動を起こせば、受け入れてくれそうです。

私自身は地域で多職種の集まりがあれば、できるだけ出るようにしています。また、茨城県薬剤師会経由で、精神科系の講師依頼があれば極力、引き受けるようにしています。また、「こころのクリニック水戸」との関係では、病院時代からつながりがあったことから、院長と顔を合わせて話し、患者さんの情報をシェアする機会は多くありました。いわゆる診療報酬上の「文書をもって云々」ということではなく、むしろ症例検討という範囲かも知れません。

それも新型コロナの影響で出来にくくなっていますが、毎朝、クリニックに挨拶には行くようにしています。タイミングよく先生と会い、「そういえば・・」と、先生が気になっている患者さんについて話をすることもあります。

近年は、入退院時の医療連携の推進が求められています。今回の診療報酬改定でも、手術前にお薬の情報を一元的に把握して、医療機関側に伝えるということが評価されたと思いますが、現状では、入院を把握できるか否かという、いわば、その前段階の状況ではないかなと思います。患者さんから「今度手術するんだ・・」など、整形外科等の合併症手術については、事前に知る機会はありますが、精神科の入院という意味では、残念ながら把握しづらい状況にあります。

先に述べたように地域的には厳しい面はあるかも知ませんが、今後、入退院支援にも取り組みたいという思いはあります。その取っ掛かりの一つとして、精神科の在宅業務が考えられます。実は近隣には栗田病院時代の仲間が、訪問看護師、精神保健福祉士さんとして居て、その需要があると言ってくれます。始めれば自然と訪問看護師さんなどから、入院情報も入ってくると思いますので、精神科疾患を含めた地域包括ケアシステムの構築に少しでも貢献できるのではないかと思います。