【第2回】病院薬剤師と薬局薬剤師の違いを理解し、それを活かす

下川 友香理氏総合メディカル株式会社 上席執行役員 薬局事業本部長 学術情報部長


外来がん薬物治療患者の支援において、病院薬剤師と薬局薬剤師には「患者と関わるタイミング」「かかりつけ薬剤師」「薬剤使用期間中の患者フォローアップ」という3つの違いがあると考えます。

1つめの「患者と関わるタイミング」については、化学療法の前なのか後なのかが大きな違いです。病院薬剤師はカルテを確認し、施行に処方監査を行い、副作用が発生している場合は減量・中止・支持療法などの提案を行います。重篤な副作用への関与も多いと考えられます。薬剤師外来などで患者と直接話すこともありますが、すべての外来患者と直接コミュニケーションをとることは難しい場合が多いのが現状のようです。

薬局薬剤師はカルテを閲覧できません。化学療法施行後に、処方箋と患者から聴取した情報に基づいて、アドヒアランスと副作用の確認を行い、問題発見時には対処法の指導や支持療法提案を行います。基本的にはすべての患者に関わります。

2つめの違いは、薬局薬剤師は「かかりつけ薬剤師」として、長期的かつ継続的に患者に関与することができることです。かかりつけ薬剤師は、患者からの信頼を得ることができ、情報を得やすくなります。また、患者の体調や気持ちのわずかな変化に気づくことができ、治療終了後に発現することも報告されている免疫関連有害事象(immune related adverse effect:irAE)などの副作用に対しても長期継続的に担当する中で対応することができるのが強みです。

3つめの違いは、薬局薬剤師による「薬剤使用期間中の患者フォローアップ」です。これは、次回受診予定日までの期間中に、自宅で過ごされている患者に対して電話などで体調や服薬状況を確認する仕組みです。医師や看護師・薬剤師など多くのプロの医療スタッフが常にサポートしてくれる入院中と比較して、外来治療ではプロの医療スタッフが身近にいないことも多く、副作用への対処などに患者は不安を感じることがあります。

それに対して、薬局薬剤師が症状や小さな体調の変化から、重篤な副作用が発生する前に、状態の悪化や初期症状の兆候を早期に発見し対応することができるフォローアップ体制を整えておくのは、患者にとって非常に頼もしいものだと思います。

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薬剤使用期間中の患者フォローアップ

適切なフォローアップを行うためには臨床推論の力も必要と考えます。例えば、患者が下痢を訴えた場合、それが抗がん薬の副作用と即座に判断するのではなく、鑑別が必要です。下痢の原因が薬剤の影響、放射線などの治療による影響、感染性のもの、腫瘍そのものの影響、または患者自身の併存疾患によるものかもしれません。また、食事や栄養状態も関連している可能性があります。これらの情報を収集し、臨床推論の力を駆使して判断する必要があります。

私が経験した大腸癌患者の一例として、電話で便秘の症状を訴えられたことがありました。抗がん薬による副作用も疑いましたが、他の症状も確認すると、吐き気や食事が採れないといった症状もあり、さらに痛みも伴っていました。これらの情報から腸閉塞を疑い、受診を勧めました。結果として、腸閉塞が確認され、もう少しで手術が必要になるところでした。

このように、臨床推論のスキルを磨いておくことは薬局薬剤師が更に外来がん薬物治療患者の助けとなるために有用です。