慢性肝疾患におけるそう痒症の改善の意義
慢性肝疾患におけるかゆみは、肝炎、肝硬変、原発性胆汁性胆管炎(Primary biliary cholangitis:PBC)などでみられますが、その多くは難治性であり、患者さんのQOLを著しく低下させます。特にPBCではかゆみは初期から現れる症状で、睡眠障害をきたすほどの劇痒を呈することが知られています。
かゆみは伝達経路や抗ヒスタミン薬の奏効によって分類することができます。皮膚疾患などの末梢性のかゆみは皮疹が認められ抗ヒスタミン薬が奏効しやすいかゆみです。一方、中枢性のかゆみは一般的に皮膚病変が認められず、そう痒部を掻いても症状が緩和することなく、また、抗ヒスタミン薬の投与も奏効しにくいかゆみです。慢性肝疾患のかゆみは中枢性のかゆみと考えられ、最近の研究では内因性オピオイド受容体の活性化が関与すると示唆されています。
ここでは慢性肝疾患のかゆみの現状とともに、そのメカニズムや治療法について解説しています。慢性肝疾患のかゆみに悩む患者さんは全国に10万人程度存在すると推定されています。原疾患の治療はもちろんですが、それと同時に患者さんのQOLを改善する治療は、大変意義のあるものと考えられます。
当ホームページが慢性肝疾患のかゆみの理解と、患者さんのQOL向上に少しでもお役に立てれば幸いです。
監修:熊田 博光 先生 (虎の門病院 肝臓センター)
- ※
慢性肝疾患の定義:当ホームページで「炎症が6ヵ月以上持続している肝疾患、及びその終末像である肝硬変までを包含した肝疾患群」を慢性肝疾患と定義しています。