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第5回 統合失調症治療のポイントと臨床試験を踏まえたラツーダの評価
出演・監修(写真左から)
鈴木 健文先生(山梨大学医学部 精神神経医学講座 教授)
宮田 量治先生(山梨県立北病院 院長)
三澤 史斉先生(山梨県立北病院 医療部長)
本シリーズでは、精神科医療で先進的な取り組みを行っている施設の先生に、施設の特徴や治療方針、ラツーダへの期待などをお伺いします。
今回は、宮田 量治先生(山梨県立北病院 院長)、三澤 史斉先生(山梨県立北病院 医療部長)、鈴木 健文先生(山梨大学医学部 精神神経医学講座 教授)の3名の先生に、統合失調症治療のポイントや臨床試験を踏まえたラツーダの評価についてご解説いただきます。
統合失調症治療における薬剤選択のポイント
宮田先生:一般的なガイドラインにのっとった治療を行っています。非定型抗精神病薬に関しては、自分の中で使用する順番を決めており、1剤目で効果が出なかったら2剤目の薬剤へ切り替える、といった薬剤選択をしています。当院では、最終的に持効性製剤を使用することが多いので、持効性製剤がある薬剤を選択することが多いです。また、統合失調症治療においては、クロザピンを導入するタイミングも重要なポイントだと考えています。
三澤先生:最近、統合失調症治療の目標はリカバリーであるといわれています。このリカバリーを妨げない、非鎮静系の薬剤を使用することがトレンドで、私もそれはその通りだと思います。一方、リカバリーを妨げないことのみに注力し、副作用のことばかりを考えて薬剤を選択してしまう傾向もあるように思っており、それを危惧しています。私自身は、まずはしっかり病気を治すような、きちんと効果があるような薬剤から検討することが重要だと考えています。もちろん、長期服用のためには、副作用が出にくいことも必要ですので、個々の患者さんの背景や病歴に合わせて、有効性と安全性のバランスを考慮した薬剤選択をしていくことが必要なのではないかと考えています。
鈴木先生:薬物療法では、投与の前に、「この患者さんには治療効果が出る(出ない)だろう」、「この患者さんにはこの副作用が出るだろう」と予見をすることは不可能です。臨床試験のメタ解析の結果などから、有効性が高いと考えられる薬剤から使用していくこともひとつの方法ですが、治療効果はオーバーラップしていることが多く、実臨床では同様の結果とならないことも多いです。結局、各薬剤の臨床試験の結果を読み解き、使用経験を重ねながら薬剤選択していくしかないのではないでしょうか。臨床試験を読み解く際は、編入基準と除外基準に着目すると、その薬をどういう患者さんに使用すればよいのかが見えてくると思います。
統合失調症治療の変遷
鈴木先生:1950年代に統合失調症治療にドパミンD2受容体拮抗薬が使われはじめ、それ以降、定型から非定型の抗精神病薬が使用されるようになり、概していわゆる運動系の副作用は少なくなってきました。一方、メタボリックシンドロームに悩まされることになりました。この問題については、現在でも大きな課題となっています。
また、数々の臨床試験を見ていて思うのは、昔は症状だけを改善させればよかったものが、今はやや違ってきている、ということです。例えば、以前は、PANSSスコアやBPRSスコアが統計学的有意に低下すれば、それで効果あり、と評価されてきました。しかし、最近は、症状の軽減以外の視点も重視されるようになってきました。それらは、治療継続率や、社会機能、認知機能などです。統合失調症治療では、症状のみに盲目となるのは、もう昔の話です。今は、社会機能や認知機能を維持しながら、症状はしっかりとコントロールするという治療が求められる時代になっています。
JEWEL試験を踏まえた ラツーダへの期待
宮田先生:本邦において統合失調症の適応症を取得する根拠となった第3相試験、JEWEL試験を見てみましょう。PANSS 5因子モデル別スコアのベースラインからの変化量については、急性期で特に問題となる陽性症状をはじめ、興奮、陰性症状、不安/抑うつ、認知障害のいずれの項目においても、ラツーダはプラセボに比べてスコアを有意に低下させることが示されていました。このデータから、幅広い患者さんに使えるだろうと想像できますが、一方、この薬剤の良さが最大限に生かせる患者像とはどのようなものかという疑問を持ちました。それについては、私自身が症例を重ねて、ラツーダに適した患者像を見つけていきたいと考えています。
鈴木先生:JEWEL試験の患者背景をみると、妄想型が90%含まれ、PANSS合計スコアは約100、最長で3週間のウォッシュアウト期を設けるなど、かなりフレッシュな急性期患者が組み入れられていました。このような患者さんを対象としても、ラツーダはプラセボと比較して統計学的に有意な有効性を示したことは評価されます。また、JEWEL継続試験でも有効性が示されていますので、ラツーダは、統合失調症治療において、急性増悪期の患者さんへの効果はもちろん、維持期を見据えた治療選択肢になるのではないかと考えています。
PEARL#2試験を踏まえた ラツーダへの期待
三澤先生:海外第3相試験のPEARL#2試験は、急性増悪期の統合失調症患者さんにラツーダ40mg/日または120mg/日*を投与したときの有効性を検証した試験で、オランザピン群は参照群として設定されました。オランザピンは、現在の統合失調症治療の中でも効果があると考えられている薬剤のひとつで、そのオランザピンを参照群にしたことを、まずは評価しています。
また、PEARL#2試験の患者背景をみると、罹病期間は約13年、ベースライン時のPANSS合計スコアは95.8-97.9、CGI-Sスコアは4.9-5.0と、軽症ではない患者さんでした。このような患者さんに対してラツーダは有効性を示しました。
このように、実臨床でよく使われている薬剤を参照群とした試験の結果は、今後の治療方針を検討する際に非常に参考になると考えています。
*ラツーダ120mgは承認外用量です。
【ラツーダ添付文書2020年10月改訂(第4版)より抜粋】
6. 用法及び用量
<統合失調症>
通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40mgを1日1回食後経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は80mgを超えないこと。
JEWEL試験
本邦において統合失調症の適応症を取得する根拠となった第3相試験、JEWEL試験の詳細です。
本試験の対象は、急性増悪期の統合失調症患者483例です。対象をプラセボ群またはラツーダ40mg群に無作為に分け、治験薬を1日1回、夕食時*は夕食後に6週間経口投与しました。
有効性の主たる解析は、ITT集団を対象として実施しました。有効性の主要評価項目である6週時のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量は、併合した実施医療機関、評価時期、治療群、治療群と評価時期の交互作用及び、ベースラインのPANSS合計スコアを共変量とする反復測定のための混合モデル(MMRM)法を用いて解析し、最終評価時(LOCF)に治療効果(反応)が認められた患者の割合をLogistic regressionで評価しました。
安全性解析対象集団は、無作為化され二重盲検治療期に少なくとも1回治験薬を投与された患者として実施しました。
*本邦での承認用法は食後経口投与
主要評価項目である6週時のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量は、プラセボ群−12.7、ラツーダ40mg群−19.3、投与群間の差−6.6と、統計学的に有意であり、ラツーダ40mgのプラセボに対する優越性が検証されました。また、effect sizeは0.410でした。
副次評価項目である各来院時のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量は、ラツーダ40mg群で投与2週目よりプラセボ群と有意差が認められ、その効果は6週時点まで継続しました。
PANSS 5因子モデル別スコアのベースラインからの変化量については、急性期で特に問題となる陽性症状をはじめ、興奮、陰性症状、不安/抑うつ、認知障害のいずれの項目においても、ラツーダはプラセボに比べてスコアを有意に低下させることが示されました。
副作用発現頻度は、プラセボ群57例(24.3%)、ラツーダ40mg群69例(27.9%)でした。発現頻度が2%以上の副作用は、プラセボ群では不眠症12例(5.1%)、統合失調症11例(4.7%)、不安9例(3.8%)などで、ラツーダ40mg群では頭痛、アカシジア、統合失調症が各10例(4.0%)などでした。
重篤な副作用は、プラセボ群2例2件[統合失調症、自殺企図各1件]、ラツーダ40mg群1例1件[統合失調症1件]に認められました。
投与中止に至った有害事象は、プラセボ群15例[統合失調症11例、手骨折、精神病性障害、敵意、自殺企図各1例]、ラツーダ40mg群14例[統合失調症7例、房室ブロック、肺結核、体重増加、不安、カタトニー、妄想、精神病性障害各1例]に認められました。
試験期間中、いずれの群においても死亡は報告されませんでした。
本試験では、臨床検査値への影響も検討されています。6週時点での体重、BMIの変化量や、HbA1c、コレステロールなど糖脂質代謝への影響、プロラクチンへの影響はこちらに示すとおりです。