統合失調症治療薬 ラツーダの有用性 精神科救急におけるリアル・ノウハウ ー急性期から維持期・寛解期までー 第3回


参加医師の皆様

【9】ラツーダの急性期統合失調症治療における位置づけとは?

伊豫先生

 ラツーダは、急性増悪期の統合失調症における精神症状に対して優れた改善効果を示しましたし(図1-4)、統合失調症の再発リスクを有意に減少させたといった報告もあります。福島先生が出されたデータ1)のようにSOFASも改善させたということで、長期に使用するなら、第一選択薬にする価値は十分あると考えています。

八田先生

 ありがとうございます。藤田先生、よろしくお願いします。

藤田先生

 かつて、第一世代抗精神病薬を使っていた時代は、病棟の患者さんは皆さんぼーっとしていたんですね。当時、それは陰性症状であるといわれていました。しかし、非定型抗精神病薬が登場し、陰性症状ではなく、過鎮静だったことがわかりました。その後、さまざまな非鎮静系の薬剤が登場しました。われわれの報告では、第二世代抗精神病薬の中でも、非鎮静系のほうが入院期間が短いことが示されています2)。ぼーっとしてしまうと、リハビリに乗せにくいとか、暴力的になってしまうとか、退院後も歩けなくなったりするといった問題がありますので、それらを回避するためにも、非鎮静系薬剤を急性期から使用することは当然だろうと考えています。

八田先生

 ありがとうございます。福島先生、よろしくお願いします。

福島先生

 当院では、リカバリーを目指した薬物治療に取り組んでおりますので、スーパー救急病棟に入院してくる急性期患者さんに対しても、回復期、維持期を見据えて、ファーストラインから非鎮静系の抗精神病薬を用いた治療を行っています。リカバリーを目指す上で、社会機能、認知機能の双方の視点から薬物療法を組み立てていく必要があり、急性期治療の段階から、SOFASによる評価を重視しています。ラツーダの使用実態調査1)の結果から、ラツーダはPANSS-ECで評価される急性期の症状に効果を示し、さらにSOFASの改善が認められました(図5-9)。調査時期、患者背景、統計手法、併用薬などが異なり、直接比較をするものではありませんが、同様の使用実態調査をアセナピン、ブロナンセリンテープ、ブレクスピプラゾールで行いましたが3-5)、それらの結果を踏まえても、私は、ラツーダが第一選択のひとつになると考えています。

八田先生

 ありがとうございます。では、山下先生、お願いします。

山下先生

 統合失調症の治療薬は長期間の使用を要しますから、ラツーダのような副作用の頻度が低い薬剤を選択することは重要な観点だと思います。また、救急・急性期病棟の場合、制度上入院期間が限られていますので、この間にラツーダの有効性を十分に発揮させるためには、なるべく早い段階でラツーダを導入したほうがよいのではないかと考えています。

ラツーダへの評価と期待

八田先生

 現在、ラツーダを急性期統合失調症患者さんに未処方の先生方の中には、周囲の先生方の評価を待たれている方がいらっしゃると思います。そこで、すでに急性期統合失調症患者さんにラツーダを多くご使用された先生方の率直な評価をお聞きしたいと思います。

山下先生

 長期間使用することを考えれば、忍容性を考慮し、ラツーダを第一選択とする価値は十分にあると思います。実際に当院でも、比較的継続率が高く、脱落が少ない印象です。もちろん、経過の途中で他剤の併用が必要なタイミングも出てくるとは思いますが、ラツーダの有効性を十分に発揮させるために、なるべく早い段階での処方を検討していただければと思います。

福島先生

 急性期の患者さんに対して、十分な陽性症状の改善があり、さらに、陰性症状、不安などのさまざまな症状に対して効果がある。加えて、社会機能の改善に影響する点を評価しています。使い方の工夫としましては、効果不十分の場合には早めに80mgへ増量することだと思います(図10)。

藤田先生

 世界的にこれほど使われて、評価されているお薬が、日本でもようやく使えるようになったことを考えると、もう周囲の先生の評価を待たずとも、使わない手はないのではないでしょうか。

伊豫先生

 まず、ラツーダをまだ処方していない先生方が多くいらっしゃるという点に関しては、私が治験調整医師として関わった初期の治験がうまくいかなかったことが影響しているのかなと思っています。治験を開始したのは10年以上前になりますが、今は、当時と比べて、統合失調症の患者さんに使用している抗精神病薬の投与量が平均CP(クロルプロマジン)換算量で、相当下がっているんです。つまり、当時は過感受性精神病の患者さんがたくさんいたということです。それゆえに、その方たちにラツーダを使用しても効果が出なかったのです。しかし、最近の日本の精神科医は、その辺について十分留意するようになってきていますので、近年は一般的な臨床像を示す統合失調症患者さんが増えています。したがって、一般的な臨床像を示す統合失調症患者さんであれば、ラツーダは臨床試験で有効性を示していますので、試してみる価値はあると考えています。

藤田先生

 本邦でようやく使えるようになり、実際に使用してみましたが、有効性の観点から手応えを感じています。また、忍容性の観点からも、長期的な使用に適した選択肢のひとつではないかと考えています。

山下先生

 有効性、忍容性の両面から、ラツーダは、これから治療の主流のひとつになっていくのではないかと期待しています。

福島先生

 効果不十分で忍容性に問題がない場合、80mgに増量すれば効果を発揮できる可能性があることを、多くの先生に認識していただけると、ラツーダで救われる患者さんが増えるのではないかと期待しています。

八田先生

 ありがとうございます。先生方のお話を聞いて、私もラツーダの有効性と安全性を再認識しました。今後さらに、積極的に使用していこうという気持ちになりました。本日は、ありがとうございました。

ご登壇された先生方からは、
「有効性と安全性の両側面から、ラツーダが急性期統合失調症治療における第一選択薬のひとつになり得る薬剤」
であるとご評価いただきました。
今後とも、ラツーダを先生の急性期統合失調症治療にぜひお役立てください。

Reference

1) 福島端, 他. 精神科. 2022;40(4):555-566.※
2) 藤田潔, 他. 新薬と臨牀. 2021;70:752-762.※
3) 福島端, 他. 臨床精神薬理. 2020;23(5):531-542.
4) 福島端, 他. 最新精神医学. 2021;26(3):247-256.※
5) 福島端, 他. 最新精神医学. 2019;24(4):307-316.
※ 本論文の著者に大日本住友製薬株式会社(現:住友ファーマ株式会社)より、講演料、コンサルタント料などを受領しているものが含まれている。

関連情報

統合失調症/ラツーダについてもっと知る