レビー小体型認知症 診断ツールキット


監修:池田 学 先生
大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学講座 精神医学 教授

レビー小体型認知症 (DLB) 診断ツールキット

このツールキットは認知機能の低下を示す患者さんの診察に使用してください。DLBの診断的特徴を2段階の確度 (「Probable DLB (ほぼ確実にDLB)」と「Possible DLB (DLB疑い)」) で示しました。また、DLBの中核的臨床特徴の有無を特定するための質問を列記しています。

レビー小体型認知症の診断基準
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レビー小体型認知症の診断基準

レビー小体型認知症の中核的臨床特徴を特定するための質問票
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レビー小体型認知症の中核的臨床特徴を特定するための質問票

パーキンソニズムの評価 (5項目UPDRS)
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パーキンソニズムの評価 (5項目UPDRS)

パーキンソニズム評価実施の指示書(UPDRSより引用)
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パーキンソニズム評価実施の指示書(UPDRSより引用)

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レビー小体型認知症(DLB)を診断するために 「DLB診断ツールキット」の活用を

日本国内における認知症有病者数は2012年の段階で約462万人(2021年現在は、600万人以上)と推定されていて、“団塊世代”が後期高齢者にさしかかる2025年には、約730万人※1に達するといわれています1)

レビー小体型認知症(DLB)は認知症疾患の約20%を占め、アルツハイマー型認知症(AD)に次いで患者数が多い変性性認知症疾患です2)。レム睡眠行動異常症(RBD)や幻視、パーキンソニズムなど特徴的な症状が知られていますが、初期診断にてDLBと診断された患者さんは最終的にDLBと診断された方の約2割程度であったとの報告があります3)

2017年に改訂されたDLBの診断基準4)では、必須の症状である認知機能の低下に加え、RBDなどの中核的特徴と並んで、神経画像検査による指標的バイオマーカーが有用であることが示されましたが、画像検査には特殊な機器を必要とすること、検査にかかる費用は高額であることからこれらの検査を実施する前に、検査が必要な対象を絞り込む必要があります。そのため、DLBの鑑別診断を行うには、まずは中核的特徴に関する問診および観察による詳細なスクリーニングが重要と考えられます。
 
「DLB診断ツールキット」は、英国のMemory and Dementia Serviceの臨床医に使用されている診断ツールの日本語版となります。「DLB診断ツールキット」はDLBの専門医が経験的に行っている診断方法を言語化していて、パーキンソン病やDLBといったレビー小体病の診断がしやすくなるように設計されています5)

現在、ほとんどの認知症に根本的な治療法は見つかっていません。しかし、正しく診断することで、個々の症状に適した治療法を提供することや、生活しやすい環境を整えることなどが可能になります。それは患者さん、そしてご家族のQOLの向上に結び付くものと期待できます。

※1 糖尿病有病率の増加により上昇すると仮定した場合(20.6%増加)、各年齢の認知症有病率が上昇する場合の将来推計人数/(率)
 
【参考文献】
1)「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)
2)小阪憲司 監修. レビー小体型認知症がよくわかる本(講談社)
3)高橋晶 他. 老年精神医学雑誌 2011; 22(Suppl. 1): 60-64
4)日本神経学会 監修. 認知症疾患診療ガイドライン2017(医学書院)
5)Thomas AJ. et al., Int J Geriatr Psychiatry. 2018; 33(10): 1293-1300.

動画で解説!診断ツールキット パーキンソニズムの評価 (5項目UPDRS)

DLBに伴うパーキンソニズムの診断には、動作緩慢、静止時振戦または筋強剛のいずれか一つが認められることが必要です。この5項目UPDRSは、DLBに伴うパーキンソニズムを特定するための簡便且つ有効性の確認された評価尺度です (詳細は下記を参照)。

手の静止時振戦

<評価者への指示>
左右の手を別々に評価して下さい。
振幅は観察される最も大きな振幅で評価します。
患者に手を椅子の肘掛に置き (膝ではなく)、足を楽に床につけ、静かに座るように指示します。10秒間、この姿勢を観察します。

                    
チェック項目
項目症状点数
正常 振戦なし。 0
ごく軽度 振戦があるが、ごくわずかでたまに出現する程度。 1
軽度 振戦があり、軽度の振幅で持続的に出現しているか、中等度の振幅で間欠的に出現する。 2
中等度 振戦があり、中等度の振幅で、大部分の時間出現している。 3
重度 振戦があり、大きな振幅が、大部分の時間出現している。 4

手の運動時振戦

<評価者への指示>
これは指鼻試験の手技でテストします。
腕を身体の前に伸ばした姿勢から開始し、少なくとも3回指鼻試験の手技を試行しますが、毎回、評価者の指に可能なかぎり届くようにしてください。
指鼻試験はできるだけゆっくり行わせます。
速すぎると振戦を見逃すことがあります。他方の手でも同じことを繰り返して行わせ、それぞれの手を別々に評価して下さい。
振戦は、運動時を通して出現する、あるいはいずれかの目標物 (指または鼻) に達するときに出現することがあります。観察される最も大きな振幅を最終評価として下さい。

                    
チェック項目
項目症状点数
正常 振戦なし。 0
ごく軽度 振戦があり、振幅は1 cm未満 1
軽度 振戦があり、振幅は1 cm以上3 cm未満。 2
中等度 振戦があり、振幅は3 cm以上10 cm未満。 3
重度 振戦があり、振幅は10 cm以上。 4

顔の表情

<評価者への指示>
椅子に座らせて、安静時、会話時を含めて10秒間、患者を観察して下さい。
まばたきの頻度、仮面様顔貌または表情の乏しさ、自発的な笑みがあるか、口を半開きにしていないかなどを観察します。

                    
チェック項目
項目症状点数
正常 正常な表情。 0
ごく軽度 まばたきが少ないため、わずかに表情が乏しい。 1
軽度 まばたきが少ないことに加えて、顔下半分にも仮面様顔貌がある。即ち、笑みなど口周囲の運動が少ない。しかし、口は閉じている。 2
中等度 仮面様顔貌があり、口を動かしていないときも口が閉じていないことがある。 3
重度 仮面様顔貌があり、口を動かしていないとき、口はほとんどの時間閉じていない。 4

運動の全般的な自発性(身体の動作緩慢)

<評価者への指示>
この全体の評価は、動作の遅さやためらい、動作の振幅の減衰、全般的な動作の乏しさ、例えば身振りや脚を組む動作など、すべての観察をまとめて行います。
この評価は座っている時の身振り、立ち上がりや歩行の様子から観察した評価者の全般的な印象に基づいて評価します。

                    
チェック項目
項目症状点数
正常 問題なし。 0
ごく軽度 ごく軽度の全般的な遅さと自発的な運動の乏しさ。 1
軽度 軽度の全般的な遅さと自発的な運動の乏しさ。 2
中等度 中等度の全般的な遅さや自発的な運動の乏しさ。 3
重度 重度の全般的な遅さや自発的な運動の乏しさ。 4

筋強剛

<評価者への指示>
患者をリラックスさせた状態で、四肢、頸部の主な関節をゆっくりと他動的に動かして受ける抵抗から評価して下さい。
まず筋強剛の誘発方法を用いず評価します。頸部と四肢は別々にテストして下さい。上肢については手首と肘を同時に、下肢については股関節と膝関節を同時に評価します。
もし筋強剛を認めない場合は、被験肢と対側の肢で指のタッピングや手指の開閉、踵のタッピングをさせて、筋強剛を誘発させてみます。患者には筋強剛をみるためにできるだけ四肢の力を抜くよう説明して下さい。

                    
チェック項目
項目症状点数
正常 筋強剛なし。 0
ごく軽度 評価者が、誘発方法を用いてはじめて筋強剛が検出できる程度。 1
軽度 誘発方法を用いず筋強剛が検出できる。評価者は関節可動域全域を容易に動かせる。 2
中等度 誘発方法を用いず筋強剛を検出できる。評価者が関節可動域全域を動かすには努力がいる。 3
重度 誘発方法を用いず筋強剛を検出できる。評価者は関節可動域全域を動かすことができない。 4

【引用元】
「Thomas AJ, et al., Int J Geriatr Psychiatry 2018; 33: 1293-1304.」のAppendix 1.
【日本語訳監修】
大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室 教授 池田 学 先生
大阪大学大学院連合小児発達学研究科 行動神経学・神経精神医学 寄付講座教授 森 悦朗 先生

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